おばあちゃんの88歳の誕生日に遺影の写真をプレゼントした話。

こんにちは。

僕のフェイスブック見ててくれてる人だと知ってるかもしれないんですけど、一週間前に山梨に住むばーちゃんの遺影の写真を撮って来ました。

88歳の誕生日プレゼントとして。

やる前は僕もそれがどういうことかはわからなかったんですが、やってみていろいろと思うことがありました。

なんて言っていいかわからなかったけど、なんとなく今なら書けそうな気がするから書くことにしました。

高齢化社会と言われる現代ですが、いろんな人に読んでもらいたいような気がします…。

  

 

✱なぜ遺影の写真をとることになったのか?

8月頭のこと、僕は東京でのセミナーと、大阪出張をひかえいろいろな事を準備したり考えたりしていた。

月末には高円寺で大きなお祭りもあるし、その後はタイに行くし…

もちろん美容室を経営しながらなのでテンヤワンヤとまでは全然行かないけど休みらしい休みは少なくて、それなりに忙しいっぽくしてた。

店閉めて実家がある山梨に帰ったりしたらさすがにヤバイかな…なんて考えていた時に山梨に住むたいやき屋で働いてる妹からラインがきた。

「今度いつ帰ってくるの?おばあちゃんが誕生日前に髪切ってほしいって」

ばーちゃんは8月19日で88歳になる。

去年、一昨年は僕も海外に行っていたし、普段はわざわざ切ってくれなんて頼まれないんだけど、なんか特別だったのかもしれない。

僕は「いいよ」と一言。

聞けば14日にばーちゃんの子どもたち(僕の親とかおじさんとか)がやってきて、家でお祝いをするらしい。

それなら…ということで僕も8月の14.15日に帰ることにした。

なんとなくその日程がちょうどよかったこともあった。

8月10日、もう1人東京に住む看護師をやっている妹が僕の店にまつげエクステをつけに来た。

それが夜一番最後のお客さんだったので、店を閉めてそのまま近所にキャンベルと妹と3人でご飯を食べに行った。

聞けば妹も14日に地元に帰るらしい。

「おばあちゃんになんかプレゼントあげようか?」

ご飯を食べながらなんかそんな話になった。

歳をとってからと言うもの、いろんなことに興味がなくなり、体も弱り、特に何を欲しがるわけでもなく、聞いても何も欲しいもんはないとかしかいわないからここ数年誕生日プレゼントのようなものをあげたことがなかった。

相談してみてもやっぱり「これだ」というものは出て来ることはなかった。

しばらくして妹がこんなことを言いだした。

「化粧水あげたらどう?」

そんなもんほぼ寝たきりの人がつけねーだろ、と思ったがなんか聞けば少し前までは化粧水をつけていたらしい。

僕が小さいころからすっぴんで頭にタオルを巻いてたばーちゃんがそんな美容的なことに興味があるとは思ってなかったが、意外と興味があったらしい。

そう言われてみれば肌もきれいな気がする…

その流れで、髪を切ったついでにヘアメイクしていい服着せて写真撮ってあげたらどうか?という話になった。

そういえば山梨に住むたいやき屋の妹から連絡をもらった時に「誕生日の時にデイサービスで写真撮るからそれを遺影にする」とかなんとか言っていたのを思い出し『それなら遺影の写真を俺たちで撮ろう!』ということになった。

ヘアは僕、メイクはキャンベル、服は妹に任せた。

「これどう?」

翌日早速こんな写真が送られてきて、服はそれに決まった。

恵比寿で15000円以上する服を買ったそうだ。

恵比寿なんてシャレてるとこで買った服なんて、きっと88年生きてきて初めて着るんだろう。

僕には1つ気がかりなことがあった。

肝心の写真のことだった。

僕も一応一眼は持っているが、何と言ってもボロいし古い。

ましてやプロでもなんでもないので、せっかくヘアメイクしていい服着せてもショボイ写真になったら意味ないじゃん…と。

14日まであと2日。

僕は地元富士吉田市在住のカメラマンを探し始めた。

友達にラインしたりメッセージしたり。

だけど見つかりそうもなかったので、思い切ってこのブログとフェイスブックに「ばーちゃんの遺影を撮影してくれるカメラマンいませんか?」と書いてみたところ、多くの方がシェアしてくれてなんと5人ほどの方が名乗り出てくれた。

残念ながら地元の人ではなかった。

神奈川や東京や静岡からわざわざ行くと申し出てくれたのがなんか申し訳なかった。

だけど、その中でも距離とか料金とかタイミングとかいろいろと考えて、直感であるカメラマン夫妻にお願いすることにした。

僕が美容室をやってる高円寺のすぐ近く、東中野在住の八坂さん夫妻だった。

早速次の日に打ち合わせに店に来てくれて、富士吉田での待ち合わせ時間やら撮影場所やら方法やら細かく決めていった。

そして当日。

僕は朝イチで帰り、昼からあちらの美容室を借りて少し仕事をした。(こんなことになるとは思わず仕事を入れていた)

八坂さん達は新宿からバスでやってきて、先に妹と合流。

僕も仕事が終わってすぐに実家に帰った。

すでに親や親戚もちらほら集まっていたが、親以外には特に何も話してなかったのでいきなり「今から遺影を撮る」と僕が言い出したときには驚いていたようだった。

カットする場所はばーちゃんの部屋にした。

新聞紙をひいて、そこらへんにあった椅子に座らせた。

ほぼ寝たきりのばーちゃんはそんなに長い間座ることができない。

なので先に着替えてもらい、カット、メイク、セットをすべて同時にやることにして、その間にカメラの方もせっとしてもらった。

クロスをつけて… 何ヶ月か切ってないという髪をカット。

僕が切るのは3年半ぶりくらいだ。

ばーちゃんはちょこちょこ切るのがめんどくさいし大変だから、いつもは近所の美容室にかなり短くしてくれと頼むらしい。

僕はなんかそれが嫌だった。

だから、子供のときによく見ていた”ばーちゃんらしい”髪型にしようと思った。

いつからだろう?パーマをしなくなったのは。

いつからだろう?こんなに白髪が増えたのは。

切りながらそんな事をふと思った。

昔の髪型を思い出そうといろいろ考えていたら、子供の頃学校が夏休みのときはいつもお昼を作ってくれてたな…。

とか、こっそり親に内緒で100円をよくもらっては向かいのボロい商店で駄菓子とかアイスを買ってたな…。

とかなんか急にそんな事を思い出して少し泣きそうになったのを我慢するのが大変だった。

いつの間にか僕は28歳になり、大人になった。

自分が歳をとれば、家族も歳をとるんだ…。

そんな当たり前のことになんだかハッとなった気がした。

親父の兄弟も黙って見守る中、キャンベルがメイクを。

出来上がりつつあるその顔がすごく若く見えてビックリした。

カットとメイクが始まってもう15分をすぎていた。

パーマまではできないので軽くブローしてコテを巻いた。

シャンプーもしてないから変な癖もついていたけどなんとか少〜しだけでもふわっとした感じにできたのかなと思う。

顔と首周りの毛を払い、部屋の横の窓際へ。

ここからは八坂さん達にバトンタッチ。

押し入れにしまいこんであったであろうシーツを垂らし、八坂さん夫妻が背景を作ってくれた。

片付けをしながら見ていて思った。

「やっぱりプロに頼んでよかった」

マジでまじでそう思った。

オヤジや親戚のおっちゃん達もたぶんそう思ってたんじゃないかなー…となんとなくこの時の写真を見てて思った。

無事撮影が終わり、なんかばーちゃんは疲れたのかご飯とケーキを食って寝た。

その後はもちろん八坂さん夫妻も巻き込み宴会が始まった。

僕の実家は基本的に誰でも来てオッケーで、僕も何人も友達を連れて行った。

東京の人も外国人も。

そしたら僕がいないときにも遊びに行くようになっちゃって。

それでもとりあえずまあ飲めって感じで、楽しければまあいいじゃないかと言うような家。

特に何もない田舎だし、来てもあんまり面白くないけど、観光しに来た友達に1番誇れるのは実家のこの宴会だったりする。

八坂さん夫妻は翌日二日酔いで死んでいた(笑)

すごく楽しい一日だった。

 

実は、こんなめちゃくちゃプライベートなことをブログに載せるかどうか、正直迷った。

でも、これを撮ってくれた八坂さんの為にも出来上がったものを載せようと思う。

これが遺影の写真になる…。

 

 

良いとか悪いとかじゃなくて、きっとこれを撮ったってことに意味があるのかなって僕は思う。

僕と妹からのプレゼント。

だけどこれは、たくさんの家族が集まったこの日だからできたこと。

ご縁があって東京から八坂さんが来てくれたからできたこと。

ばーちゃんは楽しんでくれたのだろうか?

死ぬということから程遠い(ような気がしてる)僕からしたら、ばーちゃんの気持ちは正直ようわからない。

自分の遺影を撮ろうかな…と言う人の気持ちはわからない。

だけど、ただ誕生日という祝の場で、髪や服をきれいにして撮った1枚はやっぱり特別だと思うし、集合写真とか免許証とかの切り抜きではなくてこういうのが遺影になったらやっぱり残された方も幸せだったと後々思えるのではないか…なんて僕は思う。

わからないけど。

正解も不正解もきっとない。

それは子供や孫である僕らのエゴかもしれない。

ただ、なんかこのピースの写真をみてそんなモヤモヤした気持ちから救われた気がする。

なんか最初はやっぱり不謹慎なことかとも思ってたし、切りながら少しやっぱり悲しくもなった。

でも今はこれで良かったんだと思う。

本当の幸せってなんだろうって今一度考えるいい機会だった。

なんかいろいろと、ありがとう。

もし「両親、祖父母の誕生日に写真を…もしかしたらそれを遺影に…」なんて考えてる方がいたらやってあげてみてください。

それがみんなのためになると、僕は思います。

というかやってそういう風に思いました。

では、長くなったので終わりにします…。

 

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