美容師が居酒屋を経営して学んだこと。お客さんがお店を選ぶ理由って?

突然ですが、去年の秋から始めた月曜限定の居酒屋Up to Youは本日6/26をもって終了する事になりました。

キャンベルと出会ったときの夢というか、やりたかった事だったので始めた居酒屋。

当初は1年間の予定でしたが、海外へ行く計画がだいぶ前倒しになり、7月から月の半分海外で生活するため、そもそもやれない日が出てきてしまうのです。

それと、最近ちょっと考えが変わって、仕事を詰め込むのはやめよう…と思い始めて寂しいですが居酒屋をやるために使っていた時間を他にまわそうと思ったことです。

自分勝手な理由ではありますが、そのようになりました。

もともと借りている店だからそういう事ができるというのもありますが、できたらやっぱり1年間やりたかった。

そう思いつつも、それでもすごくいい経験をたくさんできたのでそれを書き記してみようと思います。

トマトが切れればメシ屋ができる 栓が抜ければ飲み屋ができる

居酒屋の神様と呼ばれる宇野隆史さんの本で『トマトが切れればメシ屋ができる 栓が抜ければ飲み屋ができる』と言うものがあります。

まんまタイトルのとおり、メシ屋、飲み屋というのは、やろうと思えば誰だったできる商売だ。と書いてあります。

銀行員や医者は誰でもなれるわけじゃないけど、居酒屋は誰にでもできる。

定番の「冷やしトマト」は農家の人が一生懸命作った美味しいトマトを買ってきて冷やして切るだけだし、ビールは研究する人や工場で働く人が一生懸命作ったものを買ってきて冷やして栓を抜くだけ。

それで買ってきた値段よりも高いお金を頂く。

僕も居酒屋はもともと好きでよく行っていたけど、よく考えたら確かにその通り。

資格も要らなければスキルも要らない誰にでもできる仕事です。

とは言ってもトマトとビールだけではやっていけないので、調理スキルやセンスや接客スキルやお酒の知識なんかも必要です。

でも確かに他の仕事に比べたら圧倒的に簡単だし、誰でも参入できる。

だからこそ僕達もできたし、世の中には飲食店がこれだけたくさんあるのだと思います。

飲食店が多いということはライバルが多く競争が激しいということ。

それって何かオーバーストアといわれている美容師の業界とも似ていますよね。

新規参入しやすく、差別化がはかりにくい。

そんな中でどうやってお客さんに選んでもらうのか?

来店する理由を作らなくてはいけない

居酒屋も美容室も、というか参入障壁が低い業界はなんでもそうだと思いますが、お店がある事自体はそもそも価値があるというわけではなく、その店が売りにしている「ウチはこれが一番」と言えるものに価値があります。

立地が悪くてもお客さんが来る店には来るし、立地が良くても来ないところは来ない。

つまりその『ウリ』がとても大事だし、それが来店の理由になります。

「そんなの当たり前でしょ」

という声も聞こえてきそうですが、その当たり前で苦戦してる人も実際は多いのかもしれません。

僕達がやってる居酒屋は立地条件でいうとかなり駅から離れてるし、周りは何もない住宅街です。

大通り沿いに面しているけど、通るのは車ばかり。

外観も居酒屋とはとても思えないシンプルなものでした。

その店(月曜以外はバー)の常連さんで僕達がやってる時に来てくれる人もいたり、週1だけだったとは言え、多分何もウリがなければ3ヶ月も続かなかったと思います。

最後の日を迎えるに当たり、ふと「なぜ?」というのを考えてみました。

それはきっと『会話』『人』『楽しさ』というところだったのではないかと思います。

そう、料理でもお酒でもない。

僕は飲食店で数年働いてた(バイトだけど)事がありますが、でもそんな人は世の中にはたくさんいます。

料理やお酒に関してはなにも特別なことはできません。

まさしく『切るだけ』『栓を抜くだけ』という状態。

居酒屋というのはお酒を飲んだりご飯を食べたりするのを目的とするのに、お客さんの目的はそうじゃなかったんだなと思うんです。

そもそも1番よく来てくれたのは【美容師仲間】でした。

美容師コミュニティのサロカリ、昔Up to Youでやっていた美容室交流会のメンバー。

それから僕の昔からの友達。

そういう人たちはお酒とか料理とか目的ではなく、居酒屋Up to Youで出会う『人』、その人たちや僕達とする『会話』、そしてその時間を『楽しい』と感じることを目的としてわざわざ来てくれていたのだと思います。

わざわざと言ったのは、阿佐ヶ谷駅から徒歩15分もあるその居酒屋に都内だけでなく、千葉、埼玉、神奈川なんかからも来てくれてました。

大阪から東京に遊びに来てわざわざよってくれる人、外国から日本に帰国してわざわざよってくれる人。

いろんな人が足を運んでくれた理由はやっぱりそこだと思いました。

美容室で考えてみたときに、やっぱりお客さんは『髪をキレイにする』というのが一番の目的としてあると思いますし、店を選ぶ理由もその目的に関することに必然的になっていきます。

『カットがうまい』『カットがやすい』『カットが早い』

などです。

『会話』『人』『楽しい』

そういう要素はやっぱり二の次です。

でももしそれがひっくり返ったら…?

僕はすごく面白いなと思います。

美容室は毎年すごい数が出店されています。

ライバルとの競争が激しいので、安売りサロンも増えています。

安さには安さでしか勝てません。

かと言って『あそこが安いからうちも割引しよう』というふうに同じ土俵で戦ってしまっても、そもそもサロン運営の作りが違えば太刀打ちはできません。

もしお客さんが選んでくれる理由が本来の目的(施術)とは全然別のところでできて、むしろその別の目的のため来てくれるとしたら安売りなんかしなくていいし、すごく楽しく働けるのではないかと思います。

技術をおろそかにして、漫才師みたいに会話のスキルをあげろと言うわけではないです。

美容室ではよく『付加価値』がどうとか言われますが、その価値が『付加』つまりオマケではなく『メインの価値』でもいいんじゃないかな?と僕は思うわけです。

当然お金をもらう以上施術はちゃんとします。

それは居酒屋も同じで、お金をもらうのだから、お酒をちゃんと出します。

それはやるべき事であり、疎かにしていいものではないです。

ただ、来店の理由が何もそれが一番でなくても良い。

その部分は競合が多いのだから、それ以外の来店の目的をたくさん作れるかどうかが勝負なのかなといいのを僕は居酒屋をやってみて学びました。

美容師以外の仕事はヒントがたくさん

美容師は職人的な仕事なので、それ一本でやってる人が多いです。

僕の美容室でのお客さんの50%くらいは美容師なんですが、いろいろな方が来ます。

中には大学を出た人もいるし、建築の仕事をしてたという人もいます。

そういう人ほど”普通の美容師とはちょっとちがう”考え方をしているような気がします。

違う仕事には、それぞれの美学や哲学、常識やルールがあります。

そういった物と美容師という仕事を切り離して考える人は多いですが、それは凄くもったいないことです。

これはこれ、あれはあれ…なんて自分の経験を分け隔ててたら、その経験を得るために費やした時間が無駄になってしまうのかもしれません。

参入障壁が低く、ライバルが多い業界ということは、みんな似てるということです。

その”似てる”から抜け出すには個性が必要ですし、個性は様々な経験から作られるものです。

だから切り離して考えるよりも、むしろ積極的に取り入れるべきなのかもしれません。

僕はバーの定休日を貸してもらって居酒屋を始めましたが、今はそうやってなんでもシェアすることができます。

サラリーマンでもなんでも、本業をやりつつ趣味ややりたい事を仕事にできるような時代です。

だからこそ、いろんな事を積極的に経験し、本業の美容師だとかサラリーマンだとかそういうものと関連付けていくことが簡単にできます。

頭をもっと柔軟にして、もっといろんな可能性を信じて取り組んでみると、実はずっとやってた仕事がうまく回り始めるかもしれないし、それで人生がもっと楽しくなるかもしれません。

そもそも、こんな時代だから肩書なんかもういらない。

別に何屋さんでも良くて、自分がやりたい仕事を全部関連付けちゃえばいいのかなーと思います。

可能性は探せばいくらでもあって、その転がってるチャンスに手を伸ばすかどうかはすべて自分次第なんですね、きっと。

居酒屋Up to You……意味はあなた次第です。

今まではお通し料金おまかせでやってましたが、最終日の本日は【すべて料金おまかせ】でございます。

今まできてくれたたくさんの方々。

本当にありがとうございます!!

「ごちそうさま!」がとても嬉しかったです。

最終日、楽しく終われたらと思います。

多分朝までやってます。

美容師の居酒屋

2017/10/31 居酒屋Up to You初日。たくさんのご来店ありがとうございました!!!

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