僕は世の男性諸君にどうしても言いたいことがある。
スパイスカレーについてだ。
あなたが「今日日曜日だしな、ヨシ!」とか言いながら作り始めているその”こだわりのスパイスカレー”についてなんだけど、彼女に食わせる前にちょっと待ってくれる?
味見をすでにしている?
それはわかったけど、とにかくちょっと待ってくれる?
まずは一度オタマをおいて、落ち着いてビールでも飲もうじゃないか。まだ午前中だけど。いいよ今日は。
飲みながらこの話を聞いてくれ。今スパイスカレーを食わせようとしてなくても、なんならスパイスに興味がなくても良い。とりあえず男性諸君僕の話を聞いてくれ。僕はあなたに用がある。
そして世の女性に最初に言っておきたいのだが、スパイスは悪くない。ターメリックもコリアンダーも悪い奴らじゃないんです。
クミンなんか「お前臭いんだよ!ふざけんな!」と見下され、ゴミのように扱われ、目も当てられないけど本当はマジであいつチョー良い奴だから。体に。
内閣情報調査室が2019年に調べたデータによると、男に自作のスパイスカレーを食べさせられたことがある女性は25〜30歳で68.9%に登り、なんと31歳〜35歳では87.5%にまで跳ね上がるという。
ちなみに内閣情報調査室とは、内閣総理大臣直轄の諜報機関であり、国内外の政治、経済、治安に関する情報を総理官邸に上げている機関である。
スパイスカレーが、昨今の晩婚化と少子化に重大な影響を与えているのではないかと言うことで、調査されたらしい。
ちなみに真っ赤な嘘である。
けど、そこの女子たち。ギャルたち。
「わかんなくもないかも…」と思っているのではないだろうか。
あるときは父が、あるときはピが、またあるときは旦那が、突如として「ヨシ、今日はカレー作ってやろう」とか言ってくることは非常によくあるのだ。
昭和からやってる定食屋のテーブルが赤いくらいよくある。
もう、ありすぎる。
このセリフを聞いて一回目は、一回目に関しては「え、そうなんありがとう」となるのだ。
それはなる。
けど二回目からはそうはならない。
衝撃的な話なのだが、正直これは暴露して良いのかわからない国家機密レベルの話なのだが【男の作るカレーはあんまり美味しくない】のだ。
ちなみにピとは彼氏のことを意味する。令和の今、元カレは元ピなのだ。卒倒しそうである。
「近頃の若いやつは〜」というセリフはかの有名な紫式部もふんだんに使っていた。
古代エジプトの壁画にもこれでもかと書かれているのだ。
人と人は理解し合えない。だから争いが起こる。それも悲しい人の性。
争いはやめよう!ラブアンドピース!と叫ばなければならない気持ちが溢れてくる。
世界の貧困、戦争、どうしたら僕たちは平和に生きていけるのだろう?
本当の世界平和は今の世界を生きる人がきちんと考えるべきだ!
もっと違う考えの人々も許容し、手を取り合って、環境問題にも取り組んでいきたい!
そうは思うけど、ピは普通に意味わからん。
つまり何が言いたいかというと、スパイスカレーをこだわって作るピはモテない。もう一度言う。モテない。
突然このクワバラという男は何を言っているのかとお思いだろうが、これはもう伝えなければならないと思って、衝動的にこれを書いている。
もう一度言うが、スパイスカレーをスパイスからこだわって調合するような男はモテない。
マッチングアプリのプロフィールに「特技:スパイスから作るカレー」と書いているような男は「私は週二でうんこ漏らしてます」と暴露しているようなものだ。
それくらいモテない。というか本気よりの不審者。
週二でうんこ漏らすことをもはや開き直ってライフスタイルにしてしまっている。ウルトラなソウルである。
カレーへのこだわり…それは決して誰にも譲ってはいけない己の根底にある魂そのものだと、世の男どもは思っている。
俺のカレーが一番うまい。俺のカレーが優勝。最強。つおい。
ベストカレー・オブ・ザ・イヤー
アトランティス・アルティメット・キング・オブ・カリーライス
ウルトラ・ソウッ!
カレー is 魂の雄叫びだ。
大阪西成で朝から酔って何かを叫んでいるオッサンのあれも雄叫びであるが、「雄叫び」という言葉は雄にのみ神より与えられた特権であり、男という生物の猛々しい生き様であり、戦いである。
真剣勝負なのだ。女子供はすっこんどれ。と、基本的にはそういうわけなのだ。
ウルトラなソウルでウルトラなスパイスをウルトラな鍋に豪快にふりかけ、ジャガイモ、人参、玉ねぎ、豚肉などを入れて作るかと思いきや、そんなノーマルなことは絶対にしない。
「差を見せつけてやる!俺をそこらの男と一緒にすんな!」と俺流をブチかまし、突如としてみずみずしい茄子をざっくばらんに切り取って鍋に突っ込んでみたりする。
カレーに茄子を入れていいのは夏だけだぞ?と女性が思っても「そんなルールは知らねぇ!」とばかりに1月でも2月でもGWでもカレーにはみずみずしい茄子を入れたりする。
GWはカレーを作りがちなゴールデンなウィークなことも一応書き留めておこう。
とにかくカレーには茄子を入れる。もう逆に茄子しか入れないかもしれない。
人参?じゃがいも?そんな日和った野菜は入れねえ!俺は他の奴らとは違う!!こだわってんだ!!!!とか言ってみんな茄子を入れる。
みんなで茄子を入れている。
みんなと同じ。広げよう茄子の輪。
そして次に、何を血迷ったかウルトラ煮込む。これでもかというくらい火を通す。
骨がついた100g69円の手羽元を、もう軽く10往復はしただろうか。熱が。
それくらい通す。その際、男はどれだけでも待てる。
あんなにディズニーのバズ・ライトイヤーのアトラクションは待てないでキレ始めるのに、しまむらでさえろくに待てないのに、カレーを煮込んでるときだけは黙って待つのか?お前は、と。
問い詰めたい。
小一時間、問い詰めたい。
それはインドではある種の禅だと言われている。
カレーを前にして、精神を落ち着け、目を閉じ、煩悩を消し、瞑想をする。
そう。カレー作りとは瞑想なのだ。あれは。だから時間がかかる。そういうことなのだ。
そして特筆しなければならないのは皿へのこだわり。
もう匠くらいこだわる。
なぜか普段あんなにありとあらゆるものに対してズボラで無頓着を極めている野郎が、皿とスプーンには匠くらいこだわる。
「お前靴下の脱ぎ方にもこだわれよ!ぶちころすぞワレ!」と世の中の女性は心の中で思いながらカレーの前で瞑想している男の後ろ姿を目を細くして見つめている。仏様が言うところのカオスだ。これが。
そして混沌とする世界で待つ時間は女性にとっては永遠にも感じられる。
苦行、エンドレス苦行。
その果に悟りを開き、今なら世界が救えそうだと思えるように魂が昇華されたころ、ようやくそのカルマが女性の前に差し出される。
「This is my Seoul」
男は自らの魂をこれでもかと、ふんだんに、盛大に、そして静かに、差し出すのである。ただのカレーである。
最高にキマった、今ならジャニーズ超えてる。今だけはキムタクも助走つけて土下座するレベルで俺かっこいいわ。
そういう心境なのである。
そして悟りを開いた女性がただのカレーを一口食べるのを見て「どうだ?俺のソウルは」と間髪入れずに感想を聞く。すぐ聞く。
女性は「味うっすー!!」とか「なんか辛い汁!!」とか「…わからん!」などと思いながらも優しい笑顔で「美味しいよありがとう」と言うのだ。悟り。菩薩。
&マザー、そしてアクトレス。
女は生まれながらにして母であり、女優であり、さらに菩薩なのだ。
「だろ?またいつでも作ってやるよ」と汁っぽいカレーごときで得意げになっている男を、それでも優しく包み込むまるでふわふわなパイ生地ようなちょっとキレ気味の女性。
悟りはもう忘れた。混沌・オブ・ザ・混沌である。
つまり何が言いたいかというと、めんどくさいのだ。男のカレーは。非常にめんどくさい。
「うるせー、そんなにカレー食いたいならココイチに行くぞ!もしくは行ってこい!!!」が女性の本音である。
これはバーベキューのときに女性が買い出しに行き、野菜を切り、肉も切り、子供の世話をし、準備をせっせとしているときに男はぷしゅっとビールをあけて「ではでは」とか言いながら乾杯して火を起こす。
近年では火起こしは様々なお助けグッズが生まれ大変なものではなくなったため、実際はただ「ではでは」とか言って酒をかっ食らっているだけである。
そして女性が切った野菜と肉を焼き、たまに女性と子供に分け与え、酔っ払い、女性がゴミを片付け、余った材料の分配を協議し、子供の世話しながら洗い物をし、酔っ払った男どもを連れて帰るときに
「どうだ?今日は俺たちが働いたから楽できただろう!ハハハ」
などと言われて殺意が芽生えるあのバーベキューキルシンドロームと全くおなじメカニズムなのだ。
そのときの怒りの熱量により、地球の温度は2℃位あがっているらしい。プラスチックを削減してる場合ではない。
このとき、男は”本気で”役に立ったと思っている。1ミリたりとも悪気はない。それがわかっているからこそ、女性はやり場のないイラつきをちょっと高いランチにぶつけるのだ。
1480円くらいのランチ食べなきゃやってられないよ!それは!
僕は環境問題に歯止めをかけるためには、男のカレー作りをどうにかしなければならないと思っている。
飛行機の燃料やプラスチックよりまず先に野郎どものカレーだ、グレタさん。あとバーベキュー。
まずそもそも論なのだが、男のほとんどは圧倒的に料理経験がない。一人暮らしが長ければ長いほど上達するどころか手抜き技の匠みたいになる。
ろくに経験値がないのにカレーをスパイスから作ろうとすることにそもそも大きな問題があるのだ。
無理なのだ。圧倒的に。君の知識と腕では。
カレー屋さんをやっている人、料理人を除けば無理なのだ。インド人でさえ誰もができるわけではない。
君だって日本人だからといってホイホイ寿司は握れないだろ。それと同じだ諦めろ。
ただ諦めろと言って諦められるようなことなら問題にはならない。
なのでイイ感じにノセて誤魔化すということを、提案したい。
要は”やってる風”を演出する。
女性がみんな生まれながらに女優の才能を持っているというDNAのメカニズムは「アホな男をノセるため」にあるのである。それを使うときが来た。
まずスパイスを単品で買わせないことが重要である。
そもそも高い。20gで250円とかする。
10種類あつめたら3000円近くしてしまう。
なぜ1000円のカレーを食べに行こうと思わないのだ!?と女性は首を傾げるが、そこは男の本能なのだ。仕方がない。買うことに関しては諦めよう。
スパイス単体があっても他に使い道はないし、とにかくスパイス単体は邪魔である。
そこでこう提案するといい。
「あ、これ10種類のスパイスがミックスされてるらしいよ!すでに」と。
そういうものがスーパーにもないことはない。
弊社の激辛高菜先生プロデュースの【旨辛カレー粉先生】はすでに10種類近くのスパイスが混ざっていて、そんなときに非常に便利な商品であるため、いざというときに常備しておくことを強くおすすめしたい。
通販で簡単に購入できるので【激旨カレー粉先生】とググってくれ。グルテンフリーでトランス脂肪酸も入ってない。チリ抜きで子供も食える。
しかし男はそれだと物足りないという。それだとカレーのルーを入れるのと変わらないじゃないか!と。
そこで次の提案として【味噌】【醤油】を適当にいれさせて味付けを任せてしまう。
それで十分作った感はでる。その程度でいいのだ。実際は。
ただし茄子は買ってあげよう。
「〇〇くん、私茄子入りカレーがいいな」と野菜コーナーで一言いうだけでいい。
最悪茄子が嫌いな女性の場合はオクラでいい。夏っぽい野菜が入っていればなんでもいいのだ。TUBEかよ。
煮込み時間に関しては肉と野菜に火が通りさえすればいい。そんなに何往復もする必要がない。
よって骨付き肉を買わせることだけはなんとしても阻止しよう。男は黙って骨付き肉を買いがちだ。
あれは食べる女性のことは1ミリも考えていない。というか考えることができない。
骨付き肉を目の前にすると男はIQが3まで下がる。ただウホウホと骨付き肉を食べたいという思考ですべてが支配されてしまうのだ。
世の男性諸君にこれは強く言いたいのだが、骨付き肉を積極的に食べたい女性はいない。
初デートで豚足や骨付き肉が出てくる店はやめとけ。今日は楽しかったと言ってもう連絡が来なくなる。
「〇〇くん、私牛肉カレーがいいな」と一言いうだけでいい。
我が国日本のスーパーでは骨付き牛肉はまず売っていない。おしゃれぶってるスペアリブは近年並びがちだが、牛はない。
これで瞑想する男の背中を目を細くして見つめる時間を大幅に省略することができる。
その時間はお肌のケアやストレッチに当てよう。
最後は皿とスプーンだ。これも諦めさせるのは無理だ。
そこで最寄りの百均に行き、一番オシャレだと思う木の皿みたいなものと、金色の派手なスプーンを購入させよう。
それであれば220円で済む。アマゾンで1980円もする意味わからないスプーンを買われる前にとにかく百均へ行こう。その時ほど百均に感謝することはないだろう。
そして、いざ実食。
弊社の激旨カレー粉先生はなんと世にも珍しいカツオパウダーが入っている。
それ故に、うまい。さらに味噌である。
日本人のDNAは味噌でできていると言っても過言ではないくらい、味噌はとにかく万能なのだ。うまい。
弊社のカレー粉を使わない場合でも、できたらダシと味噌を付け加えることをそっとアドバイスしてあげてほしい。
「今インスタで人気のカレー屋さん味噌とダシでつくってるんだって!ちょっと試してみてくれたら嬉しいな」
これでOKだ。実際男は料理に離れていない。下手したらチョコとかはちみつをいれて大事故が起きることもあるくらいだ。
渡りに船だ!と素直に聞くだろう。もし聞かない場合は諦めて辛くて薄いウルトラソウル汁を飲んでくれ。
味噌とカツオの力により、スパイスの風味と香りはもちろんだが【薄い】【ただ辛い汁】にはならない美味しいスパイスカレーができる。
そうなれば男も作って満足、女性も美味しく食べれてめんどくさくなくて満足。
これぞ環境問題や世界平和や少子化に一石を投じる偉大な発明であると自負している。
弊社の旨辛カレー粉先生を使いこなすことで、男はむしろモテる。
モテるためには脱毛よりエステよりファッションよりなにより、まずカレーだ。革命を起こそう。エボリューション!
今日もカレーが美味しいなぁ。