僕は才能もお金もなかった。
すごく子供の頃、親にゲームを買ってもらえなかった。
家も一階建てでなんか恥ずかしかった。
二階建ての新築に住んでる友達はプレステとファイナルファンタジーをもってて、いつも行ってたっけ。
小学校のとき足が早いやつが羨ましかった。
なんで俺は足遅いんだろ…って思ってたっけ。
専門学校で東京に来たときのこと。
ワインディングっていうパーマを巻く技術がとにかく最初出来なくて、最初からすんなりできる友達の才能に憧れた。
就職して、毎月一回の試験を僕は順調にパスしてどんどん先に進んでいった。
ある時試験に落ちた。
先に行く同期が羨ましかった。
いろんな才能がある人。
お金持ちな人。
そういう人を羨ましいと思って生きてきた。
実家も全然お金持ちじゃないし、僕には優れたものがないと思ってた。
劣等感ばかりでは決してなかったけど「あの人にはお金があるから」「あの人には才能があるから」だから”できる”んだと思ってた。
22歳のある時、僕はいきなり転勤になって、転勤先の職場が嫌すぎて病んだ。
そんで辞めた。
そして仕事を辞めた次の日の始発で旅に出た。
貯金もなかったから野宿ばかりしてた。
冬なのに。
後先考えず、ただその時やりたいと思ったことを全力でやった。
もう失うものはないからバカになろうと思った。
とにかく全力で。
「バカだな」と呼ばれても気にしなった。
職を失い、残りわずかのお金もどんどん減りっていった。
旗から見たら滑稽な若者だったかもしれない。
だけどその時僕が見た世界はとてもキラキラして見えた。
思えばその時から自分の中で物事に対する考え方がガラッと変わった。
お金が無くなって東京に戻ってきた僕は何かが変わっていた。
会社を辞めても、お金がなくても、やりたい事をやってたら充実するという事に気がついた。
自分が幸せを感じられて、楽しいと思えるものはやろうと思えば意外とできる。
お金も経験も才能もいらなかった。
その後はあまりゴチャゴチャ考えずにやりたいと思ったことを素直にやって生きるようになった。
だから世界へ出た。
そしたらいつの間にか本を出版したり取材を受けるようになっていた。
才能があって羨ましいなーって見てた人、僕より先に進んでた同期はもう美容師を辞めた。
仕事がしんどいって言いながら無理して働いて病んだやつももう美容師は辞めた。
くねくね曲がり道だらけだったけど、才能もなかった僕は結局まだ続けてる。
お店も出した。
それをある種の成功と言うのであれば成功なんだと思う。
才能もお金もない。
でもできた。
才能があっても辞めてしまった人が失敗というのならそれはそうなのかもしれない。
考え方が変わってから周りの友達とかを見てて思ったことがある。
「この人は何を恐れているんだろう」ということ。
何かをしたいと思ったとき、人は恐れる。
何に恐れているかはわからない。
なんかが怖いらしい。
時間がないとか、経験が不十分とか、貯金がないとか。
もしくは人の目とか将来とか。
たぶんそういう人は「バカ」ではないのだと思う。
嫌なイメージをたくさん、そして鮮明に想像することができる。
たとえ時間があっても、才能があっても、お金があっても、頭がいいから「やっぱやめとこう」というブレーキがかかる。
友達でも独立したいと言って何年もしてない人もいるし、海外行くと言ってそんな気配が全くない人もいる。
きっと頭が良すぎるのかもしれない。
頭が良すぎるから「まずは経験積んで」「まずはお金をためて」という感じで順序立てる。
「バカになる」っていうのはそういう意味ではすごく便利。
いろんなマイナス要素を「考えるのめんどくさい。なんとかなるっしょ」で終わらせてしまう。
もしくはテキトーに考えたボロボロの改善策を実行する。
お金がない→よし野宿だ
時間がない→1日くらい寝なくていいや
経験がない→テキトーにやってみよ
将来が不安→なんとかなるっしょ
危ないかな→平気平気
周りの目が→シカトシカト
バカになるだけで「できない理由」がとりあえずなくなる。
そしていざ悪いことが起こってもバカな人は自分に都合の良い用にしか解釈をしない。
失敗した→でもいい経験できたー
お金消えた→でもいい経験できたー
ケガした→死ななくてよかったー
盗まれた→死ななくてよかったー
だからたいていなんか起きても大丈夫だし、なんか起きても大丈夫だと思ってるから何をやっても成功する気しかない。
いろいろ考えすぎて今やってることをやめてしまう。
いろいろ想像できすぎて今やろうとしてることにブレーキをかける。
バカな人はそういう事はしない。
少なくとも僕はそう。
かの有名なアインシュタインも「バカなやつほど成功する」という言葉を残してる。
表現は悪いけど、結局そういうことなのだと思う。
時間とお金も経験も、ないなら無いなりにできる範囲でやればいいだけで、チョボチョボでもやり続けたら勝手に結果は出る。
結果が出れば周りは何も言わなくなる。
本当に怖いのは「バカになりきれないこと」なのかもしれない。