プロフェッショナル食の流儀の連載が本日よりスタートします。
毎回登場するのは誰もが認める、食のプロ。
彼らはどのように発想し、新しい時代を切り開いているのか。
普段はカメラの入れない仕事の現場に徹底密着し、現在進行形で時代と格闘しているプロの「仕事」に迫ります。
第一回はプロの焼肉家として国内外で幅広く活躍している焼肉女王キャンベル。
その素顔とは、一体。
焼肉女王 キャンベル
10月、記者とカメラマンは指定された都内某所にある焼肉店へと向かった。
商店街の中腹にあり、ギラギラとした「焼肉食べ放題」の看板を掲げるその店は女王行きつけの店のようだ。
中に入って待っていると、ほどなくして女王がやってきた。
小柄な女性で、女王という肩書のイメージとは違い柔らかい印象だ。
【焼肉女王キャンベル】
1988年生まれ、奈良県出身。
幼少期、家族で焼肉を食べたのをきっかけにその魅力に取り憑かれ、高校卒業後は美容師の道に進むもプロの焼肉家として焼肉の良さを広める活動を同時に開始。
焼肉界では「焼肉女王キャンベル」の異名を持ち、これまでに【肉1キロ+ご飯大盛り4回おかわり】【4時間耐久食べ放題】など数々の実績を残してきた。
輝かしい実績の裏には一体どのような素顔が隠されているのか。
女王は取材に受け答えをしながら慣れた手つきで焼き始めた。
最初に頼んだのは塩味の鳥肉、豚ロース、ハムステーキ、タン元、もやしナムル、キムチだった。
焼肉を焼いてるとき、焼肉の話をしているときは普段とは全く違う顔になる。
女王にとってその時間は食べる前の最高に楽しい時間なのだろう。
女王が焼けた肉を口へと運んだ。
かなり大きな口をあけて食べた事にも何か意味があるのだろうか。
鉄板よりも女王に気を取られて気が付かなかったが、焦げる手前の絶妙なタイミングで肉は口に運ばれ、空いたスペースにはすぐさままた新しい肉がのせられる。
焼く、食べる、のせる。
その一連の動きは一切のムダがなく、まるで肉の舞とでも呼ぶかのようなとてもキレイな動きに見えた。
いつの間にかピッチャーになっていた。
話しているとあっという間に肉がなくなってしまった。
焼く、食べる、のせる、つぐ、飲む
これらを目で追いかけるだけでも必死だが、女王はそこからさらに「注文する」「話す」ということまで同時に行っている。
これほどまでに同時進行で様々なことができる人はそういないだろう。
その秘訣を聞いてみた。
女王はいつの間にか注文していたネギタマご飯とボールに並々もられたサラダをほうばりながらそう話した。
焼肉=持久走という概念が今までなかったので、プロのすごさを痛感させられた。
食べ始めて30分が過ぎたが女王の箸は止まるどころか更にそのスピードを早めていた。
そう話しているとあっという間に丼がカラになり、次にやってきたのがビビンバだった。
女王は同時に数種類の肉とイカゲソ焼き、フライドポテト、豆腐も注文。
そこからも女王の勢いは止まらず、むしろペースを上げて食べ始めた。
驚くべきなのは、肉を焼く、食べる、のせるというスピードは最初から変わらず、肉は食べ続けているということだ。
そしてビールもピッチャー2杯目に。
あっという間に90分がたち、ラストオーダーの時間がやってきた。
その時点ではまだ網の上には肉が変わらず敷き詰められていたり、焼かれ待ちがたくさんあったので女王はたこ焼き、ロース、梅酒ソーダを頼み終了。
何を間違えたのか店員は梅酒ロック2つと梅酒ソーダをもってきた。
さらにたこ焼きを16個も持ってきてしまった。
普通なら「これは食べれない…」と誰もが諦めるシチュエーションでも女王は全く動じなかった。
それがプロフェッショナル、焼肉女王としての立ち振る舞いなのだろう。
結局女王にとっては120分間の時間さえも短いということがわかった。
焼肉の魅力や、コツ、想いなどは十分に知ることができたが、そこしれぬ女王の本当の素顔に迫るためにはもっと多くの時間が必要だ。
そこで焼肉店を出たあとも密着取材のお願いをすると快く応えてくれた。
女王が向かったのはセブンイレブン。
女王はほとんどの場合、1軒目では終わらないという。
以前は焼肉食べ放題のあとに大盛りラーメンと餃子を食べたり、ファミリーレストランで5人前を平らげたこともあるという。
そのまま女王の自宅まで同行させてもらった。
家にお邪魔させて頂くときにある事に気がついた。
我慢できずにもうオニギリを食べているのだ。
残り10メートルでテーブルと椅子があるのに。
その理由が驚くべきものだった。
「食とは森羅万象、すべての生命の活動の源となるものであり、宇宙そのものです。焼肉は終わることのない旅のようなもので、追求すればするほど旨味が出てくる、私にとっては永遠の研究テーマです。」
焼肉女王 キャンベル
今回登場したプロフェッショナル、焼肉女王キャンベル。
世界で活躍する焼肉家である彼女の探究心と情熱は、新しい焼肉の時代に必要だ。
これからも旅を続け、常に新しい焼肉の在り方を作り続けることだろう。
〜プロフェッショナル食の流儀 次回予告〜
第二回は日本の国民食オニギリの道のプロフェッショナル、オニギリストに食の流儀を伺います。
オニギリで世界を変えようとしているある一人の女性に密着取材し、素顔に迫ります。
乞うご期待。
記者&ライター 桑原淳
山梨県出身。ライター歴3年。現在は会社経営をしつつ世界各地を旅しながら美容師、ライター、セミナー講師として活動中。