先日とある美容師と話をしていて思ったことがある。
「すごい才能があるのに、もったいない…」
開花させることができないようで、その理由はお金、時間、不安からくるもののようだった。
当然そうだ。
子供だって親からいろんなことを教わりながら自立していくように、社会人にとっても美容師にとってもそれは同じ。
才能があったところで支えてくれる人が最初はいないとやはり難しいと思う。
そうとうイカれた人ならお金も時間も実績も気にせずガンガンやってガンガン花開くのだろうが…そんなのは一握りだと思う。
適材適所という言葉があるように、然るべきところにいなければ、人の才能はどんどん埋もれていくと僕は思う。
本当に。
そういう人は過去にたくさん見てきた。
結果として大半が美容業から離れてしまう。
何が辛いって、受け皿が圧倒的にないことである。
つまり、支える側が準備ができておらず「あなたの夢の手伝いをします」ではなくて「私達のサロンの夢を手伝ってくれよな」なのである。
才能とか個人の夢は二の次だ。
まずはサロンと美容師という枠にハマることから始まる。
そこにハマらないと何事もスタートしないと思っている。働く側も雇う側も。
それが大きな間違いであり、大廃業時代を迎える最大の理由になるであろう。
そんなことを僕は思っている。
美容室大廃業時代がやってくる
2015年に海外から日本に帰国した頃から思い始めたことがあった。
「きっとあと数年で美容業界はすごく変わるであろう」ということ。
良い意味でも、悪い意味でも。
そのため2016年〜2018年にかけて美容師コミュニティを作ったり、ブログにもたくさんいろんなことを書いたり、講演で全国をまわったりした。
サロンワークとか美容師という枠にはまらず、個々で力をつけていかないとやべえぞ…と。
2017年ころには実際フリーランスが増えた。
やはりその様な変化の流れはあると確信した。
同時に激安サロンもものすごいスピードで増えていった。
業務委託契約という保証も何もない働き方が浸透し始め、従来の低歩合制&長時間労働(拘束)のサロンを見限って辞めた人がそっちに流れていた。
いわゆる”業務委託サロン”は低価格でお客さんを呼び込み、下請け美容師を使い、利益をあげる。
美容師を委託系サロンに誘導し、仲介料をとる業者も出てきたりした。
何も知らないのは美容師だけ。
サロン運営も求人も集客も全部他業種がやっているのだ。
利益は当然そちらに流れていく。
つまり自給自足ができていない。
食料自給率が低く輸入に頼る日本と同じ構図だ。
万が一切られたら、終わりだということ。
現場で働く美容師だけがそれに気がついていない。
業務委託サロンのよくある報酬の設定である【売上の40%〜50%】という報酬が妥当であると本当に思っているのだろうか。
元々がカット2000円、カットカラー3500円の設定でそこからおよそ半分である。
過去積み上げてきた実績、経験、国家資格とそれは本当に見合っているのだろうか。
僕はそうは思えない。
理想と現実のギャップ。資本力の違い。
僕の講演会に来てくれた人は聞いたことあるかもしれないが、2019年、2020年を境に美容室は減少傾向になると予想してる。
2018年は全体で見ると増加したそうだ。
でもその裏では約10000軒もの美容室が閉店している。1日27軒。
一体美容業界はどうなっていくのか?
“ここ10年で何が変わったか”をよくよく考えてみると次の展開が見える。
そしてそれはいわゆる”サロン”とか”美容師”からしたら恐怖以外の何者でもない。
今や美容室は至るところにあると言われているが、”至るとこ”ってどこ?と考えたことがあるだろうか。
今激安美容室はスーパーに進出していってる。
都心部は難しいかもしれないが、郊外や地方では当たり前にある。
一昔前にスーパーに美容室ってあっただろうか?
今やカラーが1000円〜2000円でできてしまうのだ。
駅には1000円カットなどが入り、スーパーには激安カラーのお店。
主要駅や都心部の立地がいい場所には価格が驚くほど安い業務委託系サロンが乱立している。
これは成るべくして成っている。
1000円カットもカラー専門店も業務委託サロンも業界外部の資本がある会社がやっているパターンが多い。
もしくは美容業界のトップの大企業。
資本力があるから、出店ができ、安くできるのだ。
次はどこ?と考えたときに、おそらくコンビニなどがくるだろう。
すぐではないかもしれないがコンビニに美容室が併設される未来はそう遠くないと思ってる。
お客さんにとったら便利であることはメリットしかないのでコンビニエンスという概念は無視できない。
結果何が起こるか…
というか今起こっているか…を分析してみると結構怖い。
今資本力がない中小規模の事業者…つまりいわゆる個人店が【それにつられて価格競争をしてしまっている】状態なのだ。
前々から言ってるが、これは本当にやばい状態。
資本力がないから、値下げしたツケは現場で働く美容師や、オーナー自身にまわってしまう。
ファイナルファンタジーなどのRPGゲームを想像するとわかりやすい。
パーティーが一人、また一人と倒れて離脱し、最後に残った者の体力がゼロになったところでゲームオーバー。
資本がないのに安さで対抗することは、HPが高いラスボスに初期装備で挑むようなもの。
そもそも無理ゲーなのだ。
でもそれをやってしまっている。
そしてさらに何がまずいかというと、実は美容業界の9割以上が中小規模の事業者なのだ。
安売りをしてないサロンも当然たくさんあるだろう。
でも仮に半分のサロンがそうしていたとしたら、美容業界という基盤そのものがスッカスカのボロボロになっていくイメージが湧いてこないだろうか。
駅、駅前、スーパーにあるやすい美容室にお客様を取られてしまっている!
そう思って焦って「うちも安くしますよ」ってやってしまってる。
良いサービスをして、頂く対価を下げる。
その“ヤバさ”に実はオーナーは気がついていると思う。
やらざるを得ないと思っているからやっているだけだと思う。
何が一番ヤバイかって、働いているスタッフが「そうゆうもんだ」と思ってしまっていること。
低賃金や10時間を超える長時間労働(拘束)に疑問を持たないばかりでなく、嫌気が差してきたとしてもなぜそうなってしまってるかの理由まではわからない。
だから独立して中小規模の事業者の一員になってしまう。
これも大廃業時代が来る1つの理由である。
さらに悲しいことに、儲かるのは内装業者やリース業者やメーカーやディーラーや集客サービスの会社であり、その後サロンが廃業するかどうかは正直あまり関係がないのだ。
今しなければいけないのは脱美容師、脱美容室
僕も法人ではあるものの中小規模の事業者。
店舗数は4店舗で、春から5店舗に増えるが、資本力はないといっていい。
ちょっとあるレベルなら無いと同じようなもの。
つまり自分もみんなと同じなのだ。
フリーランスとも同じなのだ。
店舗があるかないか、ただそれだけ。
だけど僕は安売りはしない。
なぜなら僕は【美容室】というサービスを売っていないし、僕自身も【美容師】という商品を売っていない。
混乱させるような書き方ではあるが、表向きは美容室であるし、僕自身も美容師である。
でも考え方として、別のものを売っていると思っている。
でなければ安売りするしか道はないのだ。
ハッキリ言うと今やもう美容室や美容師そのものに価値はない。
美容室や美容師を否定している訳ではなく、世の中がそういう評価をしているのだ。
価値がないと思うから、安い店に行く。
単純な話である。
資本がある会社が薄利多売で儲けを出そうとしてきたら、資本がない僕たち中小規模のサロンや個人は別の道へ行かなければならない。
例えば、どこの世界に今駅前で個人で300円の牛丼屋をやるやつがいるというのか。
駅前なんか家賃も高いのだから牛丼を高くするしかない。
でも大手チェーンが乱立する駅前エリアにおいては、牛丼そのものの価値は300円そこそこしかないのだ。
そうなれば高いと集客は見込めない。
もっと安くして破滅の道を進むか、別のものを売るか、全然違う路線にするしかない。
牛丼も美容師も同じこと。
今しなければならないのは【美容室】や【美容師】からの脱却だと思う。
美容室はオシャレで髪を切る店
美容師はオシャレで髪を切る人
まずはこの考えをやめない限り、新しい道は開けないと思う。
それは難しいようで、すごく簡単なことだったりする。
「好きなことをせよ」
「得意分野を伸ばせ」
世界中の著名人が口を揃えてそう言っているが、そういうこと。
それ以外の方法はない。
冒頭に「才能があるのにもったいない」というような話を書いた。
お客さんはオシャレな美容師ではなくて専門家やオンリーワンな人を求めているし、そこにお金を払いたい。
お客さんはオシャレな美容室ではなく、専門店やオンリーワンな店を求めている。
今必要なのは“求められる自分になる”事であり、おしゃれや髪を切るということは別に付属的なものであってもいい。
そして1番必要なのはそういう若者、そういう美容師を受け入れる体制である。
「美容師になれ」「アシスタントをやれ」「美容室のサービスをやれ」
そういう事ではなく、一人ひとりの個性を伸ばしていける教育を美容室もしていかなければならないし、そうしない事にはいいサービスは作れない。
そして
「美容師になればいい」「美容室に就職すればいい」
そもそも個々がそういうマインドでは個性は伸びていかない。
50万人分の1人を目指すのではなく、お客さんにとって唯一無二の存在にならなければ意味がない。
美容師業界の衰退は起こるべくして起こっていると思う。
誰かが変えてくれることではない。
9割の事業者とすべての美容師が意識を変えていかない事には、もうどうにもならないのだと思う。
大廃業は絶対に避けられないが、それでも素敵な未来は作ることができると僕は思う。
学生→アシスタント3年とかまじ無理
20代→保険とか安心して働ける店がねぇ
30代→収入が低すぎてやべぇ
40代以上→体壊したら怖い
オーナー世代→求人集客うまくいかん、運営やべぇ
主婦→子育てと両立できねぇ、やべぇ
誰得な状況なのだ…これは。
今までの美容師の働き方ではもう無理やで
— 旅人美容師JUN@超超エリート株式会社代表 (@Junkuwabara) March 9, 2019
美容師10年やって30歳になった今思うのです。
下積みして、働いて、店もって、会社やって…
美容師のキャリアアップの最後は経営者だと思ってた。
でも今メイク勉強し始めて、新しい可能性にワクワクしていて、美容師の在り方にはいろんな形があるわけで正解はないんだなと改めて思うのです。
— 旅人美容師JUN@超超エリート株式会社代表 (@Junkuwabara) March 8, 2019
アシスタントもスタイリストも経営者もフリーランスも、みんな枠にハマるのはもったいない。
誰かに存在を決められるような美容師である必要はなくて、自分の存在は自分で証明すればいい。
自信がないなら自信がつくまでやればいい。
それを決めるのはテストでも先輩でも上司でもないと思う。
— 旅人美容師JUN@超超エリート株式会社代表 (@Junkuwabara) March 8, 2019
もっともっと新しい美容師の形が生まれてくればいいのに。
人それぞれ、いろんな"得意"があるのだから、1つの枠に入っておくのはもったいない。
そもそも美容師という言葉さえを取っ払えばいいくらい思う。
髪が切れるから美容師、切れないから見習い
そんな概念はあまりにも古すぎる。
— 旅人美容師JUN@超超エリート株式会社代表 (@Junkuwabara) March 8, 2019
3月4月は今のところ東京大阪名古屋で講演予定です(依頼お待ちしてます)
働き方、集客、今後の方向性で悩んでたらぜひ👇