先日こんな相談の方がやってきました。
美容室の独立へ向けてどうしたら…という感じだったのですが、内容のひとつに”予約方法について”という項目がありました。
どういうことですか?と聞いてみると「完全予約制、予約優先制、予約なし制で迷ってるけど、どれがいいのかよくわからない…」とのことでした。
個人店で、従業員なしのプライベートサロンで、料金もそこそこ頂くとのことだったので普通に完全予約制をおすすめしておきました。
なぜそれなの?と思う人や、予約優先制ってぶっちゃけ何…って人もいるかもなーと思って、今回ブログにもちょっと書いてみることにしました。
個人的には完全予約制スタイルでやっていますが、それにも理由があります。
どれがいいかは美容室のスタイルによりますので、参考程度に読んでください。
美容室の3つの予約制度
美容室には予約優先制、完全予約制、予約無し制の3パターンがあります。
この中で多くの美容室は予約優先制をとってきていました。
近年は完全予約制、予約なし制のサロンも増えてきたようですがそれでもまだまだ予約優先の店が多いですね。
まずは3つの特徴をあげていきたいと思います。
✱予約なし制
これは言い換えると【受付順】と言うことになります。
待ち人数ゼロならすぐサービスを受けることができ、待ち人数が一人ならその次になる…
これは美容室で言うと1000円カットなどがこのスタイルです。
他業種だとラーメン屋などの安い飲食店が当てはまります。
お客様は「待たされてる」とは感じず「混んでたら待つもの」くらいの感覚で来るので、待ちに関するクレームはまずないはずです。
イライラすることはあるかもしれませんが。
特徴としてはほとんど低料金ということが上げられます。
“予約というサービスをしない”ので、サービスの質は下がります。
サービスをしないということは、そこにかける人件費や設備費がなくなるので低料金が実現し、そういったサービスを求めず安く済ませたい方が来店します。
✱完全予約制
これはお客様の為でもあり、美容室の為でもあり、双方のことをよく考えている予約方法だと思っています。
これは3つの予約制度の中で”一番強力な約束”だと言えます。
どちらも”待たせない前提”での予約なので、遅刻や美容師側の遅れがあったりすると途端に成り立たなくなってしまい、強力ゆえトラブルの元にもなります。
ですがお客様で考えるとそういう時間にシビアな面はありますが、希望の時間に待たずにサービスを受けられるというのはとてもメリットが大きいと思いますし、店側も準備ができます。
僕はこのスタイルをとっていて、プライベートサロン、面貸し美容師などはこのスタイルが一番あっています。
特徴として言えるのが”平均より高い”ということです。
一人のために時間をゆったりと確保すること、充実した空間やサービスを提供することで満足度を上げ、しっかり料金を頂く。
なのでドタキャンは困るということですね。
他業種だと完全予約制のところだと高級なレストラン、ホテル、飛行機などがこれにあたりますね。
お客様は「待つ」のではなく「予約した時間に合わせる」という感覚の方も多いと思います。
なのでこちらがよほど約束を破って待たせたりしない限りは、まずクレームはないと思います。
✱予約優先制
これは予約しなくてもいいけど、予約した人を優先しますので、混んでたら入れないかもしれませんよ…というものです。
美容室で最も多いパターンです。
ちなみに他業種ですとあまりこの制度を採用しているところはありません。
“優先”というのは非常に曖昧なのでトラブルが起きやすいからです。
その時の状況にもよるし、判断する人にもよるので、何が正しいのかがサービス提供側、お客様側どちらもわかりにくくなってしまいます。
電車の優先席なんかも似てるかもしれません。
実際美容室でも【予約したはずなのに待たされた】という現象が度々起こり、クレームのもとにもなってますよね。
特徴としては、料金は平均だけどサービスはすごくいいという点があげられます。
そう、安くても高級店のようにサービスがいいのです。
例えば表参道にある有名サロンでカット1万円でサービスがいいのは当たり前と言えます。
でも全く同じようなサービスをしつつ、カット価格4000円!みたいな美容室は世の中にたくさんあります。
安くてサービスがいいなら良くね?と思う方も多いと思うのですが、安くてサービスが良いというのは店側にとってはすごく負担になっている場合もあります。
そしてなぜそのような美容室の多くは予約優先制なのか?
これには理由があります。
予約とはそもそもサービスの一貫
例えば予約なし制の1000円カットを例にあげてみます。
「1人10分1000円」とうたっていますので一人ひとりのお客様が払うお金は安いですよね。
その分たくさんの人を担当できるように、サービスや不必要な技術を省き、セルフサービスや機械を導入して回転率をあげます。
なので必然的に「予約をとる」「時間の約束をする」なんてことはできないのです。
それよりも1人でも多くカットすることが大切です。
飲食店で例えると立ち飲み屋、回転寿司などと似ています。
そういう店で予約制なんてあり得ないですよね。
逆に完全予約制のパターンですとお客様側からしたら予約しなければ行くこともできないというのはよく考えたらめんどくさく感じるかもしれません。
でも、店側としてはどんな方が来るか把握したほうがいいサービスができるからそうしていますし、自分または店のキャパオーバーを防げます。
お待たせもしませんし、その人にあったサービス、その人だけの空間を演出できます。
そこまで配慮するのでやはり料金も高めで、回転寿司のように回転率などは考えません。
とにかく一人でも多くのお客様に来てもらうというよりも、自分たちのサービスを買ってくれるお客様に来てもらう必要があります。
なのでいいサービスを受けてもらうため、予約というサービスが必要不可欠になってくるのです。
つまり、予約とはサービスです。
完全予約制の店はサービスに力をいれています。
予約なし制の店はサービスに力をいれてません。
単純にその違いです。
であれば、予約優先制は一体どちらなのでしょうか?
予約優先という善意は優しくないかもしれない
例えば2席のお店で従業員が2人の美容室があったとします。
11:30、とあるお客様がとびこみで来店。
しかしその日はどちらの従業員も夕方17:00までもう予約がいっぱいになってしまっています。
「予約があるので17:00〜ではいかがでしょうか」
こう提案すると今しか無理だといいます。
ここで美容師は考えます…
・もしその方をお受けしたら確実に次の12:00から予約してくれてる常連さんを待たせてしまう。
・もしその方を断ったら売上が下がるだけでなく、もう二度と来てくれないかもしれない。
「こ、これは究極の選択だぞ…と。」
思いますよね。
誰しもそんな経験あると思います。
そして実際に【お受けして待たせる】という選択をする人がいるため他のお客様が『予約したのになんで20分も待つのよおおぉぉ!!』という状態になってしまい、クレームにつながるという話をよく聞きます。
独立するまで働いてた2つのサロンは週末そんな感じでした。
例えアシスタントがいるからと言っても、無理なときは無理なのです。
美容師さんのなかには「お客様は平等だから無理して受け入れて待たせてもしかたないよね」「断るのは失礼だよね」と思ってる方もいますよね。
でも、これはそもそも「誰か待たせても今受けるべきか?」と悩む時点で間違いだと僕は思います。
予約優先制の本来の意味は予約をした人を第一に考え、してない人は受付順にするというものであって、決して予約と予約の隙間に入れていいものではないです。
なので、予約優先制ですよってうたっている以上、11:30のとびこみのお客様を受けて既に予約してくれてる方に明らかに影響を与えるようあれば17:00以降に受付(予約)してもらうか、断るかの選択肢しかないのです。
しかしその判断を難しくするのがお客様のため…という「善意」です。
予約を取らないスタイルのお店は断ることに善意も悪意も何もありません。
ですが“予約もとれるし、とらなくても空いてたらいいですよ”というサービス精神とか善意がそもそも予約優先制というシステムなので、その気持ちを無視して判断するのは非常に難しいことです。
以前のお店でよくあったのが、足が悪い年配の常連さん(予約なし)がわざわざ歩いてきてくれるのですが、なぜかそういう時に限り予約がいっぱいいっぱいで…
どう考えても受け入れは無理なんだけど、断るとなんだか追い返すような形になるので心が痛く、結局受けてしまって他の予約の方をめちゃくちゃ待たせる…という状況。
本当によくありました。
それはやっぱりこちらの問題であって、それで待たされてしまった予約客の方からしたら関係ないことだし、不満につながるのだと思います。
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予約制度はサービス内容で決めるべき
解決策というかなんというか。
このお客様のモヤモヤは美容師さんは飲食店で考えるとわかりやすいかもしれません。
僕は居酒屋でも仕事してるので例えますが…
予約ができない立ち飲みなどではなく、普通の居酒屋でコースを予約したとします。
来店すると満席で30分待ち。
「飛び込みの方を優先しました。ごめんなさい」
そう言われたらまあ怒りますよね。
居酒屋では必ずテーブルに【予約席】と札がおいてありますよね。
あれって実質的なロスになります。
予約のお客様の為に、少し前から席に札をおいて抑えておくという行為をするため、そこに「一杯だけで帰るよ」という飛び込みの方がきても使えない(使わない)わけです。
そうまでして店は「待ちたくない」というお客様のために予約サービスを実施します。
そのサービスを行う為にロスがあっても、それも含めたのがサービスであり、当然料金は少し高くなるのでしょう。
だから高いお金を払うのは同じなのに予約なしの方を優先するというのは、信用問題に関わるレベルのことなんだろうなと思います。
そのように提供するサービスが多かったり質がいい場合はやはり料金に反映したほうが双方にとって健全なのかなと思っています。
同じ施術内容(例えばカット)だとしても
安い→サービス少
高い→サービス多
というように本来は変化すべきで、予約サービスがない店だとがわかればお客様も戸惑いません。
その変化がほとんどないサービス業って美容室くらいだと思うのです。
良いサービスが安く受けられる…
これはやっぱり店側やスタッフの負担が大きい気がします。
今増えていってる業務委託サロンのような低料金の美容室もまさにそうで、予約サービスもあるとなるとやっぱ大変なのかもしれません。
シャンプー、マッサージ、ドライ、接客、雑誌や飲み物の提供、予約など、美容室には様々なサービスがあります。
もしレベルの高いサービス、幅広いサービスを提供しているのであれば、予約のシステムこそ見直しをするともしかしたら今来てくれているお客様にとってはより良いのかもしれません。
現在ではネット予約も普及してるし、基本的には予約する方が多いので、完全予約制と言うのは、そんなに難しいことではないです。
美容室によって状況が違うので一概には言えませんが、僕は完全予約制にしてよかったなと思うのがスケジュール管理が楽になったのと、来てくれるお客様とお互い信頼関係を作りやすくなったのと、はっきりと予約を最優先してますと言える点でした。
なのでマンツーマンでされていたり、アシスタントがいないサロンで働く方にはおすすめです。
なんかふと書いてみたけど長くなってしまいました。
悪い癖…
なんかの参考になってくれたらとおもいます。
では。