そういえば一週間前に書こうと思ってほったらかして下書きのままにしてた記事があるので、その続きを書こうと思います。
Up to Youに来てくれたとある美容師の斬新な辞め方のお話。
僕も前から『こういうのいいなー』と思ってたので、紹介してみます。
辞めたいけど辞めたくない
別にスタッフが嫌いなわけじゃない。
なんなら好きだったりする。
別にオーナーが嫌いなわけじゃない。
むしろ感謝してる。
別にお客様がいないとかじゃない。
いつも来てくれる人には本当に申し訳ない。
けど…辞めたい。
辞めたい理由はお金。
お金がほしい。
結婚して子供が生まれる。
今のままじゃ厳しい…。
だから辞めたい。
というお方。
よくあるお話ですよね。
続きがあるんですが、その方の辞め方がとても新しくて良い感じだったので紹介します。
実はその人だけではなくて何人か似たような方が来てくれたんですけど、今後のベーシックな辞め方になるかもしれません。
それと辞めたいというのはよくある話なのですが、ちょっと違うかもしれない点が『そのサロンは好きなんだけど…』という点。
それが前提にある上で読んでもらえたらと思います。
所属サロン内で独立する
それは、意味がよくわからないかもしれないですが、雇われていた会社(サロン)のなかで、個人事業主として独立するという辞め方です。
通常独立するというと、サロンを辞めて違う美容室をつくる形のイメージだと思います。
もしくは、どこか別の美容室を月額家賃を払って借りてフリーランスとして独立するというイメージ。
このどちらかですよね。
でも雇用されてた美容室でそのまんま独立するというのは“辞めたけど辞めてない”という状態になります。
つまり雇用→非雇用になるので、一旦辞めたことになります。
でも非雇用だけど会社とフリーランス契約してそのサロンに“所属”し続けるので、実質的には辞めたことにはなりません。
この形はものすごくメリットが多いです。
フリーランスのメリットって美容師自身にフォーカスされがちで、結構オーナーとかそっちのけですよね。
ですが、これはオーナーばかりでなくお客様にもメリットが大きいことなんです。
例えばオーナーにとっては、スタイリストが辞めることでゴッソリなくなる売上が無くならないこと、そして人手がへらないので美容室の活気は保てること、フリーランス契約にすることで今まで払ってた人件費がへり、家賃収入が増えること、残ったスタッフに集客面などでも注力できることです。
またお客様目線で考えたときにも、スタイリストは今までどおりそのサロンにいるわけなので、どう考えても通いやすいし『なんかあってやめたのかな?』みたいな余計な詮索もされずに済みます。
通常辞めると嬉しいのはスタイリストばかりで、お客様やオーナーやスタッフには迷惑をかける場合がほとんどです。
労働環境が悪いのであれば辞めるのは当然ですしその人の自由なのですが、どうしてもオーナーやお客様への恩とか人情的なもので動けずにいる人もいると思います。
正直、自分の生活とそういった恩をなかなか天秤にかけることは難しいです。
オーナーやスタッフも嫌いみたいな場合はどうしようもないですが、そういう場合の打開策の『所属サロン内での独立』はめちゃくちゃすべてが丸く収まる場合が多いです。
具体的な変化
雇用されてる美容師が所属してたサロンで独立した場合の変化についてです。
勤めているサロンが会社ではない場合は、会社=オーナーだと思ってもらえたらいいと思います。
左が「雇用されてたとき」で右が「所属サロンでフリーランスになったとき」です。わ
【収入】 毎月の給与→毎日の成果報酬
【保険年金】 会社負担→自己負担
【集客】 会社負担→自己負担
【確定申告】 会社がやる→自分でやる
【予約管理】 会社がやる→自分でやる
【顧客管理】 会社がやる→自分でやる
ここまではフリーランスになる人はどこで働こうがみんなこのような変化は必須です。
今まで会社がやってくれてたことを自分でやらなければならなくなります。
もし雇用されてたサロンでフリーランスとして独立するとしたら、ここから下がただ退職してフリーランスになった人とは違います。
【会社との関係】 雇用→フリーランス契約
【会社への支払い】 無し→毎月の家賃
【材料費】 会社負担→自分で買うor会社から買う
【顧客との関係】 変化なし
会社を辞めて違うサロンでフリーランスになる人と、会社を辞めたけどそのまま同じサロンでフリーランスになる人との決定的な違いは上の4つです。
まず【会社との関係】が雇用からフリーランス契約へと変わります。
これで今までサポートしてもらってた様々なこと(保険とか集客とか)の恩恵は受けれなくなります。
その代わり、時間が圧倒的に自由になります。
今までは社員だったので『8時に出勤』といわれれば8時に行かなければならなかったのですが、フリーランスになれは会社はそういう強制はできなくなります。
つまり“予約があるときだけ行けばいい”ので、ミーティングも朝礼も参加する必要が無くなります。
そして【会社への支払い】ですが、当然払うもんなんかなかったと思いますが、フリーランスになることで毎月の家賃を支払う必要があります。
毎月の家賃は『売上の◯◯%』なんてものではなく、決まった『月◯万円』という金額です。
マンションとか借りるときも『月収の◯◯%が家賃です』なんて言われないですよね。
適正金額はサロンによるので一概には言えないので、そこはオーナーと要相談という感じになると思います。
【材料費】についてはフリーランスになったら自分で発注するのが基本ですが、所属してたサロンでそのまま使いたい薬もあると思います。
なので使った分だけ支払うか、いちいち買い取るか、ディーラーに別の請求書をだしてもらうなどすれば解決します。
最後に1番のメリットがこの【顧客との関係】です。
変化なしということは普通やめたらありえないことです。
会社との関係性や働き方は、一人ひとりのお客様には関係ありません。
「同じ場所で美容師を続けてくれている」というのはやっぱり安心感にもつながると思うし、やめて違う美容室で独立しますといっても多少なりとももとの場所からは離れてしまうはずです。
なので『同じ場所で独立する』という事をすると、自分にとっては理想の働き方ができ、オーナーは売上を持っていかれず、サロンの活気が保たれ、家賃と人件費が減り、お客様は同じ場所で同じ人にやってもらえて安心…と。
なんかいろいろ丸く収まるのです。
ただ問題点もある
フリーランスはすべて自己管理が基本です。
もし同じ場所で独立をしたとして、会社との雇用関係にない場合は予約管理も当然すべて自分でやる必要があります。
ですがもしサロンに予約の電話がかかってきて、それを別のスタッフ(会社の従業員)がとったとしたら、それは“予約管理という仕事をタダでやってもらってる”という状況になってしまいます。
かといってこれは元々そのサロンにいたとしたら仕方がない部分でもあるので、会社と決まりを作ったほうがいいと思います。
電話予約を会社が引き続き取ってくれる代わりに月○○円支払うとか、お金で解決してしまったほうがモメなくてすむと思います。
同じようなもので掃除、洗濯などもどちらがやるのかで変わってくるので、それらも諸々込みの家賃設定などになっていれば問題はないと思います。
他にも『新規には入れない』というのも注意点です。
例えばホットペッパーを見てきました!というお客様は”会社がお金を払って来てもらった”お客様になるので、当然フリーランス契約の人は入ることができません。
『誰でもいいので今から切ってくれませんか?』というフリーのお客様も同じです。
フリーランスは“自分の指名の方”のみ担当できて、他はすべて会社のお客様なので完全に別で考える必要があります。
あと1つ問題点をあげるとしたら他の残ったスタッフへの説明とかかなと思います。
それはフリーランス化する美容師、オーナーがしっかりと説明したらいいのかなと思います。
意識が変われば誰も傷つかない
お客様からしたら場所が変わるというのは面倒でしかなく、1番迷惑をかけてしまう人々だと思います。
ですが、お世話になったオーナーや残されたスタッフにも迷惑は少なからずかかります。
オーナーからしたらスタッフが辞めるというのが1番の痛手だと思うのですが、どうしても蚊帳の外になりがちなのが残されたスタッフ達。
例えば辞めていった先輩が心の支えである場合もあります。
フリーランスという形に変わったとしてももし同じ場所で美容師として働いていたらまた違うのかもしれません。
個人的には不満があるなら行動はすべきだと思いつつ、いろいろ敵を作るのも良くないし、むりやり辞めて後味が悪くなるといろいろともったいないですよね。
たぶん最初に書いたように『辞めたいけど辞めたくない』というパターンの人はサロン内で独立するという形のほうがすべてうまく丸く納まるように思います。
オーナー、他のスタッフの理解があればこそですが…。
今後こういう形での辞め方、フリーランス化も進んでいくと思います。
僕はシェアサロンを経営していますが、その前はずっと1人だったのでやっぱり誰かいると活気も違うし楽しい感じもします。
それにシェアサロンのオーナーとして、良くも悪くもスタイリストには干渉しないので楽です。
オーナーもスタイリストも、いろいろな可能性を模索して、フリーランス化が騒がれてる世の中ですし雇用とフリーランスのメリットデメリットをしっかり把握して、できるだけ幸福度が高い働き方を選んでいけたらいいですね。
新しい辞め方のお話でした。