今日は美容師向けの記事です。
特に美容学生さん、アシスタントの若い子達に読んでもらいたいなーと思って書きます。
今度11月に名古屋の大きい美容専門学校で授業をさせてもらうことになりました。
それは【海外での美容師について】というテーマなのでこの記事とは違うのですが、「将来のために今できること」ということは共通すると思います。
美容師アカデミーで技術を学ぶ美容学生
僕は美容師アカデミーというものを運営しています。
サロンのオーナーが講師をつとめ、オンラインサロン内で技術に関する投稿を見たりしつつ、実際にサロンで技術のレッスンを受けることができます。
スカイプを使ったレッスンも行っていて、どちらも1時間2000円という格安な値段で受けることができます。
そんなアカデミーには主婦、辞めてしまったアシスタント、技術をもっと学びたい若手スタイリストが入ってくれていますが、美容学生さんも入ってくれています。
今日はそのうちの1人の女の子を紹介しようと思います。
国際文化理容美容専門学校に通うハンナちゃん21歳。
自然の中でボケーっとすること、動物とたわむれるのが大好きで、おじぃちゃん おばぁちゃんと話すのが好きらしいです。
将来は、世界をバックパックひとつで周るという夢があるそうです。
アカデミーに入ってくれた理由はup to youに以前来てくれた時にそんな話になったのと、出来るだけ早くフリーで働けるくらいの技術を磨きたいという思いから。
ハンナちゃん曰く、将来は「いろいろな人と関わっていく中で、出会っ人たちの話を親身になって聴くことを大切にした美容師になりたい。ネイルも好きで今勉強中なので、将来はカット、ネイル、を中心にやって行きたいです。」とのこと。
ハンナちゃんは今実際に三鷹にあるサロンALBAで講師にレッスンを受けています。
講師は営業時間に関わらず空いてれば教えてくれるというスタンスなのですが、ハンナちゃんはALBAのスタッフの朝練に混じってレッスンを受けています。
本人も「サロンのレッスンに紛れ込めるとは…」とビックリしていたようですが、よく考えたらめちゃくちゃ貴重な経験ですよね。
すべての技術はもう学ばなくていい
僕は学生の時もアシスタントの時もずっと疑問に思ってたことがありました。
シャンプーの授業の後に先生に「美容室入ったらイチから鍛え直される」と言われ「え、じゃあなんで今何やってんの?w」と思いました。
また、卒業する前に「この中の半分くらいは1年以内にサロンを辞めます。だから頑張れ」と言われたときも、「え?半分とかwそんなん言っちゃだめじゃねw」と普通に思っていました。
きっと僕だけでなく上の世代も下の世代もみんなそう言われて来たでしょうし、今の美容学生もそうでしょう。
実際に間違ってないです。
シャンプーはそのサロンのやり方を覚えなくちゃいけないし、実際に1年目の時に会社の同期はどんどん辞めていきました。
なぜ辞めるのか?
それはもう様々な原因があります。
美容師側に問題があることも当然ありますが、環境の問題もあります。
お金が…とか、時間が…とか、人間関係が…とか。
あげるとキリがないので省きますが、ぼくの同期で同じ店舗で働いてた「なべちゃん」は肩の持病が悪化して結果的に辞めました。
シャンプーの動きに耐えられない…と。
1年目が終わって明日から後輩が入ってくるという時にバックルームで「淳がうらやましい。私も本当はカットしたい。」と言われたのはなんか今でも忘れられません。
土日はシャンプー台から離れられない時もあったし、当たり前にそうやってお給料をもらっていました。
先輩は手荒れがひどくて肩まで荒れていました。
その時は何もできなかったし何も言えなかった。
会社のせいでも誰のせいでもなく、そういう時代だったから仕方がない事です。
だけど「もしシャンプーしなくていい職場だったら辞めずに済んだのに…」とずっと思っていました。
今は働き方も多様化していて、様々な専門店があります。
ヘッドスパ専門店、カット専門店、カラー専門店…
僕のようにフリーランスでマンツーマン施術をしていれば、1日に数人しかシャンプーしないので、人によっては手荒れしない範囲で働くことができます。
実際に手荒れが酷かったという嫁のキャンベルはマツエクとカット専門店での仕事を掛け持ってバランスよく働くことで、美容師としてカットをやりつつ、フリーランスとしてマツエクしつつ、たまに店でシャンプーもしますが全然荒れない範囲でやれています。
そのように、これからはなんでもかんでもやらなくて良いと僕は思います。
トータルビューティーサロンや、アシスタントとチーム制の大型サロン、ブランド型の有名サロンだと話は別ですが、無理な人はそうじゃないところで働くという選択ができます。
ハンナちゃんはカットとネイルで食っていきたいと言っていて、それは何も間違ってません。
可能なんです。
僕が今アカデミーで担当してる男の子は大手サロンのアシスタントを辞めてカラー専門店で働いています。
カラーリストをやっているなかで「やっぱりカットもしたい」という思いになり今学んでいます。
なんかそれで良くないか?と思うんです。
働くために必要な技術だけ学んで、その後また必要になったときに必要なことだけ学べば無駄はなくなります。
“美容師”って今はもうあまりに意味が広範囲すぎるのだと思います。
カラーリスト、カッター、シャンプーマン、スパニスト…
どれが1つしかできなくても、ちゃんと美容師です。
美容学校に在学中に学ぶとどうなるか…
日本では法律で美容学校を出ないと免許が取れない仕組みになっています。
美容学校からしたら当然国家試験に受かってほしいので、授業内容は国家試験の学科や実技がメインになってきます。
たまに美容師で「国家試験の内容が悪い」とか「美容学校で実践的なことを教えないからすぐ現場で働けない」とか言う人もいますが、それは仕方ないことで学校のせいじゃありません。
僕も同じようには思うものの、法律ってそう簡単にホイホイ変わるもんでもないので、きっとこのままなんだと思います。
ならば、在学中にやってしまえばいいのではないか?と僕は思います。
私立の高校に行くために塾に通う子どもたちはなぜ通っているかというと、レベルの高い学校に入るため、そしてついていくためです。
美容学校→美容室
を私立の高校への進学だと見立てたらイメージがし易いかもしれません。
美容学校→美容室は確実に知識面技術面でレベルが上がるわけで、実際にそこについていけないから最初のうちはお給料も低いし、入社してからたくさん練習しなければならなくなります。
ならば先にやってしまえばいいわけです。
例えば専門2年生が卒業まで、週2で2時間ずつカットのレッスンを受け、他の日に自主練を続けたら1年後にはスタイリストデビューレベルには全然なれると思います。
カラーだって薬剤知識、塗布技術、ブリーチ、ハイライトなどの技術も学校行きながらでも十分にスタイリストデビューレベルまでいけます。
例えば肌が弱い人ならそのままカット専門店に入って働けば20歳でお給料もそれなりにもらえるし、その後興味があればハンナちゃんのようにネイルを学んだりしてもいいと思います。
そういう常識は今までなかったので「美容学生のうちに変な技術のクセがつくと困る」とか「アシスタントやらないと社会人としてあーだこーだ」と言う人もいますが、それは関係ないことです。
美容師はみんなそれぞれ教わってきた環境や歩んできた道でやり方が違ってきます。
セニングシザーを使う人もいれば、レザーを使う人もいます。
どちらが良い悪いなんて決めつけるのはナンセンスじゃないかなと思います。
それにアシスタントをやったほうがいい人も確かにいますが、全員が全員そうじゃありません。
ブランドを受け継ぐ人材になる、有名店を支える人材になる…
そういう人達はそういう店でイチからやるべきで、そうでない人は無理にそうする必要はないという話です。
ちゃんと自分の未来を考えて選択することが重要です。
理想とする未来
美容師アカデミーを作った背景には美容師コミュニティサロカリがあります。
アカデミーの講師は全員サロカリのメンバーです。
そのサロカリではメンバー間で勝手にどんどん就職が決まったりしています。
交流して、実際に話して「あ、この人(このサロン)いいな」とお互いが思えば逆にそうならないわけがありません。
なんか就活なんてそれで良くないか?と思うんです。
「人がほしい」と言っているサロンはまだまだサロカリ内にもたくさんあって、マッチングはこれからも増えていくはずです。
僕の理想とする未来は「人の繋がりで仕事が見つかる」という未来です。
アカデミーでレッスンしてくれたサロンにそのまま入るも良いし、サロカリを経由して正社員、パート、フリーランスとしてどこかのサロンに入るでも良い。
求人情報だけではしれない情報を知った上で納得して入ったほうが離職も少なくなり、結果的にそのほうがいいと思うからです。
他にも【美容学校→アシスタント→スタイリスト→独立】という流れが今まだ一般的ですが、アカデミー+サロカリというコミュニティを介して【美容学校→カラーリスト→独立】という流れができたり、【美容学校→独立】も可能だと思っています。
そしてこれから特に女性がもっと活躍できる未来になればいいなと思います。
結婚しても、出産しても”続けられる美容師”が理想です。
家事、育児をしながらでもキツくない働き方はもう存在します。
せっかくお金を出してとった免許、せっかく身につけた技術を「もう普通のサロンだと子供いるから無理だな…」で終わってしまったらすごくもったいないです。
過去に辞めてしまった同期のなべちゃんもそうですが、何らかの理由でやめていった人もたくさん見てきました。
その人たちが戻れる場所ももっと増えていくはずです。
今は多くの美容師仲間がいるから、いろんな可能性を考えて実行することができます。
業界を変えるとかは無理だしそんなことしたいと思ってないけど、関わった1人の人生は変えられると思ってます。
ハンナちゃんのように、美容学校行きながらでも頑張ってる子もいます。
復帰を目指してレッスンを頑張っている方もいます。
ハンナちゃんは将来訪問美容や海外で働く事を視野に入れているそうです。
そういうことまで考えて在学中にトレーニングするなんて僕が学生の時はとても考えられなかった事です。
でも時代は間違いなく変わっています。
何をやって何をやめるか。
何を信じて何を疑うか。
全部人それぞれです。
決断も行動も自分が決めること。
やりたい事ができて、好きな人と過ごして、そこに幸せを感じられれば僕はなんでもいいと思います。
どこに住んだって、どんな美容師だっていいと思います。
自分の未来や幸せをは他人が決めるものじゃないから、信じてすすめばきっといい事あると思います。
頑張ってる美容学生と、理想の未来のお話でした。