ーすみませんー
それは、とある小さなニホンという島に溢れんばかりに生息する不思議な種族がコミュニケーションをとるために最もよく使う言葉だという。
ある研究によると、その種族=ニホンジンのほとんどがすみませんだけで意思疎通ができるらしく、20歳〜39歳の成人の平均使用回数はなんと1日に10回にのぼる。
多いときには1日に30回以上使うこともあるという。
世代別平均すみません回数
0〜5歳 | 0回 |
6歳〜12歳 | 2回 |
13歳〜19歳 | 6回 |
20歳〜39歳 | 10回 |
40歳〜59歳 | 6回 |
60歳以上 | 2回 |
NPO日本すみません研究所調べ
何を隠そうそんな僕も実はニホンジンである。
だからこそこの問題に関しては真剣に考えなければいけない時がいずれやってくると思っていた。
それが今なのかもしれないと思い、殴り書いてみる。
実際にすみませんはどのような時に使われるのだろうか?
過去の自分の記憶や人の会話を思い出すと本当に多岐にわたることに驚かされる。
例えばこんな時だ。
ファミリーマートへ向かい、103円の紙パックジャスミン茶を手に取りレジのお姉さんにクールに渡す。
「ピッ。103円になります。袋ご利用ですか?」
「あ、だいじょぶっす」
「はい、7円のお返しです。レシートはご利用ですか?」
そんな時だ。
「さっせ」
仕事や人といるとき以外ははっきりと言葉を発することが困難になるため「さっせ」などと僕は言ってしまいがちだが、これはすみませんである。
こんなシチュエーションではすみませんを使う人も多いのではないだろうか。
これはどういった意味合いだろうか。
レシートはご利用ですか?に対しての答えであり、僕はレシートを受け取ろうとしなかった。いや受け取りたくなかったのだ。
「103円のレシートなんかいりません。今すぐゴミ箱へ捨ててください。」を変換するとさっせ=すみませんということになる。
つまり、拒否。全力で拒否している。
では、今度は少し状況を変えてみよう。
「ピッ。103円になります。袋ご利用ですか?」
「あ、はい。あ、ストローももらえますか?」
そんな時だ。
「あっすみませーん」
なんと今度はお姉さんがすみませんを言い放ったではないか。
これは僕のストローをもらえますか?の問に対する答えであることは明白だ。
お姉さんはつまり「はいはい、ストローですね。少々お待ちくださいね」をすみませんに変換したということになる。
つまり、待て、である。OK, Just moment.である。
そしてストローを入れてくれるお姉さん対して僕はすかさずこう言うだろう。
「サーセン」
ストローを入れてほしいという要求に対して、迅速な対応してもらった事への全力での感謝の気持ちを表す言葉がサーセン(すみません)であった。
お姉さんは笑顔でストローを袋へ入れてこう言った。
「7円のお返しです。あっ!」
その時事件は起こる。
なんと僕の手から5円玉が1枚転げ落ちてしまった。
すかさずお姉さんが「す!すいませ!」と叫んだ。
これは明らかに「お金をうまく渡せなかった!あやまらなきゃ!」という気持ちの現れだ。焦りも感じる。
誰がどう見ても謝罪である。
「いえいえ」
5円玉を拾ってファミリーマートをあとにした。
この一連の出来事は一体どういうことなのだろうか。
完璧に成り立っている。
ファミリーマートに入ってから出るまでに拒否、待機、感謝、謝罪という4つの場面ですみませんが登場した。
わずかに2分程度のやり取りですでにすみませんをお互いに2回使ってしまったのだ。
1分に1回ペース。1日は1440分もあるのでこのままのペースで行くと睡眠時間をのぞいて1日に800すみません。
これは本当に恐るべきことだ。
今度は、少し角度をかえてすみませんの意味について考えてみよう。
すみませんとはそもそもどういう言葉で作られているのだろうか。
【済む】+【ません】
という言葉から成り立っており、済むは終わりを意味する言葉である。
エンド、ゴール、ラスト、終焉
それらが【ません】によって打ち消されており「終わり……じゃない!」というある種のノリツッコミのようにもとらえられるし、何か壮大な冒険がまた始まるような気もするし、ブラック企業で終電すぎても働く社畜を表しているような気もしてしまう。
奥が深い。
そして「ません」は丁寧語であり、丁寧でない言い方も当然ある。
「すまぬ」だ。
あまりにも武士な響きだが、これも様々な場面で使うことができる。
だか、注意したいのは謝罪の場面だ。
例えば会社の上司など目上の人に対してうっかり「すまぬ」を使ってしまうとほとんどの場合さらに相手を怒らせることになり、大目玉をお見舞いされる可能性がある。
それは危険なのでやめてほしい。
段々とすみませんの本質がわかってきたが、まだ謎は多くのこっている。
たとえばこれ。
「すみませんでした」
「ません」の過去系であり、終わらなかった過去があるという事を言い表している。
これは十中八九小学校の夏休みの宿題のことだろう。
始業式の日に宿題を忘れる子供の98%は”実はやってないだけ”という統計がでている。
当然先生もそれは知っているので、子どもたちは「すみませんでした」と正直に読書感想文などが終わらなかったことを先生に報告することで許しを得るのだ。
このすみませんでしたは社会人になっても当然応用ができる。
そしてもう1つ上げるとするとこれだ。
「ませんか?」
か?は疑問・確認・勧誘などの意を丁寧な気持ちをこめて表す。
すみませんか?
例えば約束をすっぽかして彼女が激怒しているタイミングですかさず「すみませんか?」と言うとどうなるだろうか。
「ダルいしもう終わりにしてお茶でも行かない?」「まだ怒ってんすか?」という意味になり、諦めともなだめる言葉ともとれる。
さらに自分の非は認めずとりあえずめんどくさいのでその場を収めようという意味が強く込められており、ほとんどの場合彼女は般若と化し、関係は悪化するが、別れたい場合は非常に有効な手段である。
この様に、すみませんは日本語のどの言葉にも変化してしまう。
だからニホンジンはコミュニケーションをとるときにすみませんを多用するのだ。
しかしいいことばかりではない。
一説によると、多用しすぎてなんと地球に影響を及ぼしており、北極の氷が溶けて海面上昇しオランダが沈没の危機にひんしているのも「すいません」の使い過ぎが原因かもしれないという夢を見た人がいるとかいないとかそれくらいのレベルなのだ。
まず、すみませんをエネルギーに換算してみよう。
ニホンジンの成人男性の平均体重は66kgらしいのだが、そのくらいの人が60分話し続けると120kcalを消費するという。
すみませんに使う時間は1秒だ。
ということは1すみません=0.03kcalになる。
0.03kcalをさらに仕事、熱量、電力量をあらわす数値ジュールに換算すると125.52ジュールに等しくなる。
1ジュールは、小さなリンゴを1メートル持ち上げる時の仕事に相当する。
つまり125ジュールに相当する1すみませんは結構すごいエネルギー量であることがわかる。
20〜39歳の成人が1日平均10すみませんを使うので
【10すみません=1250ジュールとなり】
20〜39歳の全人口2798万人が放つエネルギーは34975000000ジュールにも達する。
349億7500万J。everyday.
それがどれほどのエネルギーなのかピンとこないだろう。ちなみにこれを書いている僕も全然来ていない。
調べてみるとヘビー級ボクサーのハードパンチが1000ジュール相当だという。
ヘビー級といえばマイクタイソンだ。
ということはマイクタイソンが349万発のハードパンチをぶっ放すのと同等のエネルギーを生むということになるではないか!
これはとんでもなさそうだが、まったくもって規模感が伝わらない。意味不明の極みである。
しかし、計算をわかりやすくすることで理解度は多少あがるだろう。
10すみません=1250ジュール=1.25回マイクタイソンパンチ
ということになるので、つまり20〜30代の成人は1日に1マイクタイソンパンチをしているのと同じことになるのだ。
もうそろそろ計算がめんどくさくなってきたがざっくり日本の人口1億2600万人の平均すいません回数が1日5回だとすると、なんと78750000000ジュールになる。
787億Jである。毎日787万マイクタイソンパンチ。
ハンパない。さすがの地球も割れる。
マイクタイソンのパンチに勝てるやつはいないのか?と絶望していると、ドナルドマクドナルドがコソッと耳元でこういったのだ。
「らんらんるー」
なんと日本語に翻訳すると1ビッグマックは100万ジュールもあるというのだ。
マイクタイソンパンチの1000倍ものエネルギーである。
強い。ビッグマック超強い。
すいませんに換算したらなんと8000回分。
1日10すいませんを使ったとしてもなんと2年分。
ビッグマック=すいません2年分
もう全然意味がわからない。
世の中どうなってるの?
とりあえずすいませんって実際何なんだ。
なんなの?マジで。
ごめんなの?ありがとうなの?
そこどいてなの?
店員さーんなの?
マイクタイソンなの?
すいません、誰か教えてください。
なんで僕も含めてみんなそんなにすいませんすいません言うんですか?
えってかすみませんとすいませんって何かちがうんですか?え、一緒?
すいませんってタバコを?
え?なんのとこ?
もうマジ言ってる意味わかんない。
あなたのことが全然わかんない。
自分のこともわかんない。
暇だから書き始めたのに全然収集つかない。
ジュールって何。理科なの?
とりあえず日本語やべえってマジ。
むずすぎ。