3月末、チリでいろいろ大変な目にあった話です。
ちょい長いです。
前回の記事はこちら→チリで大洪水に巻き込まれて...バスターミナル生活二日目
27日の朝、目が覚めるとともに自分の臭さにビビった。
24日の昼にシャワーを浴びて、その日の夜にバスに乗り込み25日、26日とターミナルで過ごしたためずっと風呂に入ってない。
とりあえず頭とか気持ち悪い。
バスターミナルのトイレは使用料がかかったんだけど、2日目くらいから流石に無料開放されてたので、そこでシャンプーして体をふくことに。
みんな考えることは同じらしく、頭洗ったりしてる人がたくさんいた。
横でおっさんたちがせっせと体をこすってる様子はまるで銭湯のようで、ちょっと笑えた。
さすがにバス会社も食料尽きたようで、もうご飯は出てこないらしい。
ちなみにこの日も朝の時点では動くかどうかわからないとのことだった。
サンティアゴ行きの目的であった谷津ゆりえとの約束にももう間に合いそうもない。
ちょっとだけ、うっすらと希望はあるが、風前の灯の波平の髪の毛くらいうっすらなのでもう諦めてた。
ごめんよ谷津ゆりえ。
それ誰やねんって人はググってください。
とりあえず朝ごはんを食べようと思って、市場に向かってみた。
するとそこには乗客の皆さんが。
僕がターミナルを出るちょっと前に『バモ!チーノ!なんとかかんとか!』とか言ってたのはどうやら市場にご飯行こう!と誘ってくれてたらしかった。
ここでまた僕のスペイン語能力がアップ。
バモ→意味:レッツゴー
これを新たに覚えた。
ご飯を食べ終え、みんなでバスターミナルに戻ると大事件が発生。
バ、バスがねぇ(笑)
みんな( ゚д゚)こんな顔になっていた。
『なんてこった!』
『まさかサンティアゴ行っちまったのか!』
『お、俺の荷物が!』
乗客のみんなは口々にこんな事を言っていた...と思う多分。
僕なら言うもんね(笑)
でも聞いてみるとどうやら給油しに行ったみたいだったのでホッとしたものの、話を聞いてみるとなんとバス会社が北部のアリカに本日午後引き返すことを決定したようだった。
そしてもしアリカに一緒に戻れば全額返金、ここに残れば差額を返金ってことだった。
アリカに戻る理由も意味もないので僕は差額をもらいアントファガスターに滞在すること決めた。
その後、何をしていいかとわからず、しかも寝床だったバスまで消えてしまい途方に暮れていた。
そんな時バスの乗客たちはなにやら話し合いをしていた。
なに話してんの?と聞いてもスペイン語で言われてよくわからないので翻訳アプリで英語に変換してみてもらったところ
『サンティアゴまでの区間でバスが通れないところは歩いてみようかと話し合っている』
みたいな英語が出てきた。
またバカにしてんなこいつらとか思ってたら一人のリーダー格のオッサンがこういった。
『バモ!』
は?行こう・・・?
『チーノ、アリカに行くのか?』
『行かないよ、ここに残ることにした』
『よし、じゃあ行こう!』
『えっ』
どうやらホントに歩くことになってしまったらしい。
今まで一緒だった乗客たちと。
一瞬迷ったが、その他の選択肢よりも少しは前進できるだけに、望みがあるかもしれないとついていく事にしたんだ。
大量の荷物を肩に、手に、僕らはターミナルを出発した。
まずはタクシーで街の中心部に向かい、そこからローカルバスを2台乗り継ぎ街のハズレまで出た。
ここから歩くという。
どうやら本気らしく、ちょっとついてきたことを後悔した。
本当何もねえ月面みたいなとこをひたすら歩く。
歩く...。
その決死隊はエクアドル人のリーダーのおっさん率いる総勢15名。
隊員はペルー人、チリ人、そして僕。
16歳の少年2人、子連れの女性、60くらいのおっさん、おばちゃんも含まれる。
大丈夫かこれ...。
そんなことばっか考えていた。
案の定おばちゃん達はすぐに息を上げ休憩にはいり、立ち上がれなくなってしまった。
大量の荷物に加え、スモモとかバナナとかなぜか持っている。
おばちゃんという生き物は本当に不思議だ。
このままフルーツと一緒に干からびないことを切に願うばかりだ。
さらにリーダーのおっさんは諦めて行く人だけ引き連れてさっさと行ってしまったりするのでチームワークもクソもない。
言っても彼らもおっさん達なので少し歩いたら休憩、少し歩いたら休憩で全然進まない。
いまいちよくわからないので詳しく作戦を聞いてみたらここはサンティアゴに続く道だから、ここで巨大なトレーラーをヒッチハイクするんだと。
もうねアホかと。
15人でヒッチハイクなんて不可能だろとか思ってたところ、置いてきたおばちゃんご一行が到着した。
車で。
7人程で少しでかい乗用車をヒッチハイクしたらしい。
無理矢理にも程があるってくらいの乗り方で。
すると今度はそこに警察が登場し、叱られ、呆気なく降ろされてしまった。
再び揃った15人の奇妙な決死隊。
警察が去ったあと、ヒッチハイクを開始。
...5分後なんと巨大なトレーラーが僕らの前に止まった。
マジだった(笑)
急げ急げとばかりに乗り込む人々。
映画の密入国とかのシーンがそこにはあった。
すでにどっかで拾われた5人がいて、総勢20人でトラックの後ろにひっついてる真っ暗な倉庫みたいなところにいるわけだ。
トレーラーは月面みたいなガタガタ道をすっ飛ばし、サンティアゴに向けてひたすら南下していく。
倉庫の中ではおばちゃん達が持ってきたフルーツが振る舞われる。 (なるほど、この為に)
みんなホッとしたのか和気あいあいと話し始めて、なんだか楽しそうな雰囲気が薄暗い倉庫とマッチしてんだかしてないんだか、そんな感じだった。
ドライバーさんがちょいちょいトイレ休憩を挟んでくれつつ、とにかくトレーラーは走り続けた。
髪を切った男の子とトイレ休憩中に記念撮影。
3度目のトイレ休憩の時にはもう薄暗くなっていた。
そして夜がやってくる。
10時前に大きめの空き地にトレーラーを止めそこでこの日の移動は終了した。
ドライバーさんはプーマのTシャツをきた人の良さそうなおっさんで、そのプーマさんがかしてくれたコンロでお湯を沸かしコーヒーとお茶を頂く。
残念ながら夕食はない。
夕食どころか、どでかい石が荒れ地にゴロゴロ転がってるだけで、明かりも全然ない。
そんな中お茶を飲み、ふと空を見上げるとびっくりするほど満点の星空が広がる。
こんな綺麗な星空を見たのはなんだか久しぶりだった。
『チーノ!プレイミュージック!』
声がどこからともなく上がり、なんとなくOasisのWonderwall、ゴイステの銀河鉄道の夜、19の炎を弾いて歌ったところみんなから小銭が投げられ500円ほどゲットしてしまった。
倉庫の中も電気などなく10センチ先も見えないほどの暗闇で、しかも土埃だらけの鉄の床にバッグを枕に寝るという決して快適とは言えない宿だけれども、まるで修学旅行の時みたいにテキトーにみんなでごろ寝し、おばちゃん達がキャッキャッキャッキャッ騒いでいて、それを見てるだけでも面白かった。
深夜は冬のヨーロッパかってくらい寒すぎて全然寝れなかった。
半袖ハーパンしかもって無い少年に上着二枚とズボンを貸した為に自分が着れるものもなくなり、Tシャツ4枚くらい着込んでたけど全然無駄だったが、なんとなく誰かの役に立てた事が嬉しかったりもした。
連れてきてもらうだけでなにもしてなかったから。
一体明日はどうなるんだろう?
明日にはサンティアゴにつくのだろうか?
考えるだけ無駄なのでもう完全に流れに身を任せることにした。
頭の中ではさっき歌った『炎』がエンドレスリピートしてた。
叫んでる僕ら 肩組み、踊ってる
ずっと笑ってました
耳元で喋るあなたの声
今でも聞こえます
僕達あなたと笑ってる この道を走り続けてる
振り返ること 許されない 前を向いて走り続ける
あなたが教えてくれた 人を愛する思いや鉄の馬に
乗って行くよ
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