先日ひょんな事からフィリピンのセブにあるスラム街に出張ヘアカットしに行ってきました。
厳密に言うとそのスラム街がある島はマクタン島と呼ばれ、セブ市に隣接しています。
空港があったり高級リゾートがたくさんあり、観光客に人気の場所です。
そんな高級リゾート地にある知られざるスラムのお話。
ホテルの従業員をカットしたら
セブシティに滞在中に同じホテルに三泊しました。
高級ホテルとはいえないものの、エアコンもあるし、かなりキレイでサービスも良くて、それで一泊2人で2000円ちょっとだったので気に入って泊まっていました。
街でカットするためにレセプションのお姉さんにダンボールをもらってビサヤ語(フィリピンの言葉)でいつものように看板を作るのを手伝ってもらいました。
それがきっかけでホテルの従業員とも仲良くなって、最終日に1人のおっちゃんをカットしました。
彼はプレグロ。
プレグロの意味はわからないけど、あだ名みたいなことを言っていました。
本名はなんとJUN。
2人で「まじで?ww」ってなりながらカットをしました。
カットしながら「明日マクタン島に海を見に行ってみる」と言うと、彼はマクタン島に住んでるらしく良かったら息子の髪を切ってくれないか?と言われました。
もちろん全然いいよ、とフェイスブックを交換してその日は別れました。
翌日午後1時に待ち合せていたショッピングモールに1時間早くつきました。
この日は朝から嵐のような天気で、僕は外で切るものだと思ってたのですが、どうやら無理そう。
どうするんだろう?と思いメッセージのやり取りをしているとプレグロは「家なら切れるかも…でも…」となんか乗り気ではない様子。
無理してやることもないと僕も思ってたので、また明日でもいいよと返事をしたらちょうど雨がやみました。
そしてプレグロは「今から行くよ」とメッセージをくれ、ショッピングモールにやってきました。
家までは歩いて10分くらいだと言うのでまだ小雨がパラパラ降る中をプレグロについて行きました。
地図にない集落
マクタン島はこのような感じでセブのお隣にあります。
プレグロに「どの辺?」ときくと「うーん多分この辺」とよくわかってない様子。
なんで自分の家の位置がわからないんだよ(笑)とその時は思ったのですが、その理由はあとでわかりました。
セブに来てからというもの高級リゾート地ではないセブ市内に滞在していたので、初めてまともにマクタン島に来たのですが、それなりに人も多いし車も走ってるし、ショッピングモールや小さいお店もたくさんあります。
大通りをしばらくあるいたら「ここだよ」と曲がっていきました。
正面には少し大きめな家が見えました。
ああ、あれかと思って歩いていくと、その手前の細い路地に入っていきました。
路地はどんどん細くなっていき、ボコボコの道と水路と壁しかありません。
まるで迷路のような路地を5分ほどあるくと少し開けた場所に出ました。
舗装された道路があるものの車は走っておらず、なんのための道路なのかは最後までわかりませんでしたが、そこからマクタン島とセブ島を結ぶ大きな橋を見ることができました。
そこはもう海辺でした。
そこからさらに奥に入り、更に細い路地にはひしめくようにツギハギの家が並んでいました。
またしばらく歩き「My house」と言われたところはなんというか小屋というのが1番しっくりくるような家でした。
中に入ると人がたくさんいて、僕たちは「Hello!」と挨拶をしながらその小屋をまた奥へと進み、最後の四畳ほどの部屋の前でプレグロが止まりました。
1番奥の部屋でプレグロと奥さんと子供が座っていました。
世界を旅してるときに様々な国で現地の人の家に遊びに行ったりカットしに行きましたが、思えばフィリピンの家庭には行ったことがありませんでした。
なので「ああこんな感じなんだ」と特に気にもせず、早速カットを始めました。
プレグロ曰く5人カットしてほしい人がいるとのことで、僕とキャンベルで同時に切ることに。
カメラはプレグロに渡して適当に撮ってもらいました。
まず僕は彼の6歳の子供ジェイを。
スーパーシャイで何も話しませんでした。
2人目はおばちゃん。
バッサリとショートにしました。
フィリピンではロングの女性ばかりなので、ショートはとても珍しいです。
カットしてるといろんな人がやってきて、子供もいつの間にか6人とか7人とか増えていて、小さな家がワイワイと賑わってきました。
2人で6人をカットしたのですが、カットしながら大人たちと話しているときに衝撃的な事実を知りました。
1ヶ月家賃1000円のスラム街
話の流れで「ここはスラム」という言葉を聞いて「えっ?」ってなりました。
鈍感なだけかもしれませんがスラムとは一切思わず普通に「ちょっと貧しい感じだな」くらいにしか思いませんでしたが、そこはスラム街だったんです。
小屋だと思っていたところは3世帯が住む家で、僕が「プレグロの友達かな?」と思って話していた人は大家さんでした。
奥の四畳の部屋にプレグロ一家、その手前の少し広いところには大家さん7人家族、僕達がカットしていた場所はキッチンだったようです。
確かによく見たら電気もあるのかわからないし、ガスコンロどころか炭みたいな灰みたいなものの上に鍋がのっていたのでそこで料理をするのでしょう。
キッチン手前には共用のトイレが。
風呂はどこかわかりませんでしたが、雰囲気的に建物内にはなさそうでした。
その手前、1番入り口に近いところには大家さんの妹の家族が住んでいます。
全部で17人くらいの人が小屋だと思ってるところに住んでいるようでした。
確かに言われてみると壁とかないところもあるし、周りの家もみんなそんな感じでした。
家自体は海の上に柱で建っていて、すぐ裏は一応海なのですが、ビーチとは程遠い光景でした。
地図にもない迷路のような路地を歩き、辿り着いた家の場所なんて確かにグーグルマップを見てもわからないというのがこの時やっとわかりました。
調べてみると、セブ島にもやマクタン島と同じようにスラム街があるそうです。
そもそもスラム街というものは川沿いや海沿いなど、あまり人が住まない場所に作られるようです。
人が住まない場所だから土地代は安いけど災害のリスクとも常に隣り合わせ。
さらに、木製の家でガスでもなく薪とかで料理をするようなので、一度火事が起こると大変なことになるようです。
基本的には密集してるため、以前にも僕が訪れたマクタン島のスラム街付近で大火災が起きたようでした。
四畳程の部屋に一家でごろ寝、他はすべて共用。
電気もガスもなく家はボロボロ。
衛生状態も悪い。
家賃は月1000円。
スラムだと知ってて行ったたわけではないけど、結果的に初めてスラムの生活のリアルを見れた気がしました。
もちろん隅々まで見たわけでもないけど、今まであちこち旅をしてきて貧しい場所も行ってきて、でも何かまた特別でした。
スラム街に暮らすフィリピン人の家族の絆とは
大家さんの2人の息子がやってきて、1人は14歳、もう1人は19歳ですでに働いてるようでした。
スラムに住んでるといえど、プレグロのようにホテルで働いてる人もいるというのがなんというか意外でした。
意外というのは、勝手なイメージでスラムに住んでる人は働いてないのかな…と思っていたけどよく考えたら仕事ゼロではそれこそ生活はできません。
仕事をした上でそういう生活なのでしょう。
スラムには高齢の人もたまにいますが、圧倒的に子供が多い印象でした。
その理由は子供がどんどん増えていってしまうからだそうです。
カトリックが多いフィリピンでは中絶はしてはいけないそうです。
それに環境や貧しさで避妊をできなかったりするそうで、どんどん子供が生まれていってしまい、更に貧しくなるという流れが背景にあるようです。
実際、大家さんには2人の息子以外にも娘さんがいて、娘さんは17歳の時に子供が生まれて現在20歳で2児の母だそうです。
そう考えるとプレグロのように清掃とはいえホテルで働いてても、3人の子供と奥さんを養うのは大変なことなんだと思いました。
でもあの日カットをしながら話した何人もの人達を見てて、なんかすごく明るくてビックリしました。
よく日本人の旅人が貧しい国に行って「あの人たちは貧しいのに明るくて、日本人はうんたらかんたら」って言うのを聞きますが、なんかそうのはあんま好きじゃないけど、そういう印象を受けました。
「将来何になりたいの?」
14歳の弟くんに聞いたとき、お兄ちゃんがすかさず「キャプテンアメリカだろ!」とか言ってみんな爆笑。
そんな感じでみんながみんな冗談を言ったり笑いあったり。
僕がいたから特別そうなのかな?とも思ったけど帰り際に大家さんが「これがフィリピンの家庭の姿だよ」って教えてくれました。
冗談言って楽しいからいいじゃん、みたいな。
全然血もつながっていない家族同士が本当の家族みたいになって暮らす場所。
確かに貧しいし汚いのかもしれないけど、なんか僕にはそれよりもすごく素晴らしいものがあるような気がして、なんかすごく考え方が変わりました。
帰りにプレグロが「みんなのカット代」といってペソを渡してくれました。
「いらないよ」って一瞬言おうとしたけど、プレグロは「料金おまかせ」ってわかってて僕を呼んだわけだし、ここで受け取らないのは失礼だと思って素直にありがとうって言ってもらいました。
ポケットにそのまま突っ込んだから金額はわかりませんが、それはどうでもいいことでした。
ただただ気持ちが嬉しかったです。
人生で初めて行ったスラムは、大通りからは何も見えない場所でした。
活気があって、車がクラクションをならし、人がたくさん歩いてる通りから細路地を入っていくとそこには別世界がありました。
地図にものってないし、上空からしかその世界を目で見ることはできません。
高級ホテルやリゾートで観光客もあふれる島だけど、でも確かにその場所はあります。
そして暮らしてる人がいます。
フィリピンとかセブとかって聞くと治安が悪いイメージを持たれると思います。
間違ってない部分もあります。
治安が悪いところもあります。
同じようにスラム街と聞くと治安が悪いイメージがあります。
悪い人がたくさんいるようなイメージがあります。
でもそれは全く違いました。
そういう場所も世界にはあるだろうけど、僕が行ったスラム街とそこで出会った人たちは全く違いました。
本当に大人になったつもり、いろいろ旅したつもりでも知らない事だらけなんだと痛感しました。
なんかわからないけど自分の中ですごくこの経験が大きなことのように感じます。
将来的に何らかの形に繋げていきたいなと結構マジでフツフツと思っています。
今後の人生を左右されそうなくらい衝撃的で、良い経験ができました。
なのでこのブログをいつも読んでくれてる皆さんだけでなく、いろんな人にそういう場所があり、素敵な人たちが生きているということを知ってもらいたいと思ってこれを書きました。
行ってボランティアしたほうがいいとか、貧しい国に支援した方がいいとかそんな事を言いたいわけじゃなくて、ただ知るだけでいいんです。
何もしなくていいから、そんな世界もあるとただ知っているだけでいいんです。
プレグロ、そしていろいろ話してくれた皆さん、本当にありがとうございました。
もらったペソで日本のお土産もってまた切りに行きます。