今日でベトナム中部高原地帯の町バンメトートに来て5日がたちました。
次の予定があるので、今夜ホーチミンに向けて出発します。
もし時間があればもっといたかった…
なんなら住みたいとさえ思ってしまうほど…
そんな小さな町で起こった数々の不思議な出来事について書いてみようと思います。
毎日通ったとある市場
バンメトートは小さな町と言っても人口30万もいる都市です。
でも僕達が滞在してるのは中心部から離れた場所で、朝5時からニワトリが鳴きだし、散歩をするとすぐこんな光景が広がる場所。
このデコボコ道の裏側に位置するのが地元の人向けの市場。
1日目と2日目にヘアカットしたいと思う場所を探していて「ここだ!」と思ったのがその市場でした。
僕たちはそんな市場で髪を切り始めました。
初日はドリアンを売ってるところをジロジロ見ていたら、【髪切ります!】の看板に気づいた人が「なにこれ?」と読み始めたところから始まりました。
この薬局のオバチャンがいろいろと世話をしてくれて、終わり頃に「また明日も来てよ。切りたい人いっぱいいるよ」と言ってくれて、翌日も行くことに。
2日目の終わりにも「また明日切って」という人がいて、結局3日間毎日その市場に通いました。
写真は全部載せきれないけど全部で20人以上をカットしました。
もしこのあとホーチミンでの予定がなかったら、もし日本に帰国する予定がなかったら、もっと長いことこの町にいた気がします。
それくらいこの市場で出会った人たちが素敵すぎて、楽しくて…
この3日間で髪を切ったり、いろいろ助けてくれた皆さんにジェスチャーと覚えたての下手くそなベトナム語を混ぜてひとりひとりに挨拶。
「ネイマーイ、ホーチミン、カムオン、ガプライ」
「明日ホーチミンに行く。ありがとう。また会いましょう」
握手したり写真を一緒に撮ったりして最後泣く泣くお別れをしてきました。
不思議な町バンメトート
初日にこんな記事を書きました。
「なぜ貧しい地域や国の人が裕福な人に施しをするのだろう?」
そんな話をしながらビールを飲んでいたら隣にいたベトナム人達と仲良くなって奢ってもらって感激したという話です。
彼らのお陰ですごく幸せな気持ちになったし、嬉しくなりました。
最後「See you again!」と言って笑顔で去ってしまったから、僕らは「誰か他のベトナム人にこの恩を返そう」と思いました。
そして次の日…
ピッチャービールが100円のお店で飲んでいると1人話しかけてきた男の子がいました。
名前はミー。
彼は英語が話せました。
バンメトートに来て本当にびっくりしたのが”英語を話せる人に会わなかった”事でした。
髪切ったりなんやかんやで100人くらいとは言葉を交わしたと思いますが、宿のスタッフでさえ英語が通じませんでしたし「how much」とかの簡単な単語さえもみんな通じませんでした。
今まで行ったどの街でも流石にそこまで通じないこともなかったし、髪切る時だって1人や2人話せる人がいるもんでした。
バンメトートはそういう点でも不思議な町でした。
そんな中出会ったミー。
彼の友達は話せませんでしたが、通訳してもらいながらしばらく一緒に飲んでいました。
聞けば彼らは18歳の大学生なのだそう。
僕は「ああ、きっと今だな」と思いました。
前日もらった恩の返し時のことです。
キャンベルにも「この子達のぶんも一緒に払おう」と伝えていたのですが、ミーがトイレに立って戻ってきてしばらくすると店員がレシートのようなものとオツリを持ってきたのです。
彼はなんともう払っちゃっていました。
僕らのぶんも。
「マジかよ…」と思って払おうとすると「僕たちは生まれて初めて外国人と話したんだ。嬉しかったから出させてくれ。」と。
何度か断られたけど最終的には半ば無理やりお金を渡してきました。
気持ちは嬉しかったけど、こちらも出そうと決めてたので引くに引けず…
なんか本当に不思議でした。
たぶん観光客があまり来ないから日本人というだけで珍しいんだとは思います。
でもそれを差し引いても「なぜそこまでしてくれるの?」と思わずにはいられませんでした。
その翌日からもいろんなことが起こりました。
市場でのこと。
「新しい財布がほしいからあれ買いたい」とキャンベルがなんか言っていました。
僕達が髪を切ってた横でブルーシートを広げて財布やカバンを売ってるお姉さんがいたのです。
僕は「勝手に買えば?」とスルーしていましたのですが、しばらく経って「なんかお金受け取ってくれなかった」と新しい財布を片手にキャンベルが戻ってきました。
お姉さんが「プレゼントや」と言ってどうしても受け取ってくれなかったそうです。
もう頭の中は「???」でした。
また、僕達が髪を切ってた向かいではお兄さんがドリアンを売っていました。
僕は昔フィリピンで食べたことがあるのですが、キャンベルがないと言っていたので「食ってみてよ」「嫌だ」「くえ」「イヤ」をドリアン兄さんの前でやっていると「はいよ」と売り物のドリアンを1つ割って食べさせてくれました。
お金を払おうとすると、やっぱり受け取ってくれませんでした。
「ほ、本当にこの町はなんなんだ…!」
自慢ではないけど、世界各国100都市以上を巡っていて、こんな町は初めてでした。
みんなおもしろいくらい言葉が通じないのに、めちゃくちゃ気にかけてくれて。
髪を切ってたからこそそうやって輪に入れたし、お酒の力を借りてノリで一緒に飲んだりしてたわけだけど、それにしてもここまで【施し】をしてくれた所は今までなかったように思います。
なんかいてもたっても居られなくなり、小さな売店に走りました。
前日にスコールが一時やってきたときに雨宿りさせてくれて、髪も切ったおばちゃんの店です。
そこで氷とコップと飲み物を買い、戻りました。
僕達が髪を切ってる近くでシートを広げてモノを売ってる人たちに配りました。
もちろんドリアン兄さんにも。
他に店もなくジュースだけでしたが、ちょっとだけでも恩返しできてよかったなと思いました。
お金では連鎖しない恩
もし何かしてくれた人がいたとして、その人に「これはお礼です」と現金を渡したとしても、多くの人は受け取ってくれないような気がします。
それは売買だからです。
モノをあげた側の人たちは売ろうとしてるわけではなく「気持ち」でそうしています。
だからそれに対して「お金払うよ」っていうのは違うのかもしれません。
でもきっとモノなら受け取ってくれます。
ジュース以外にも、髪切った人やお世話になった人に【5円玉】を「ご縁をありがとう」と言いつつ渡しました。
日本の硬貨は外国では金銭的な価値はほぼないけど、コインがないベトナム人にとってはちょっとレアなものじゃないかな?と思ったので50枚くらい持参していました。
穴が開いてる硬貨は珍しいですしね。
他にも宿のお姉さんにフルーツをあげようと思い、フルーツ片手に帰宅しました。
するとベトナム人の宿のおっちゃんの友達が遊びに来てて「一緒に座りなよ!バナナワインを飲もう、」と言ってめちゃくちゃワインを飲ませてくれたんです。
宿の宿泊客のカップルと一緒にいろいろと語りました。
やっぱりおっちゃんは「お金なんかいいよ」と言っていました。
その晩に聞いたベトナム人の平均月収は15000円ほどなのだそうです。
最初に僕達に奢ってくれた3人組はたぶん1000円くらい払ってただろうし、ビール屋で学生達が奢ってくれようとしたときも同じでした。
それは彼らにとっては決して安くない金額なので、なおさら不思議に思いました。
ホントなんかすごい驚きでした。
この前も書いたけど、こうやって恩を受けると自分もそうしたくなってきます。
お金があるとかないとかではなくて、気持ちの問題なんだろうな…
なんかこの観光客もいなくて田舎でのんびりしたバンメトートに来たことでまた少し成長できたような気がします。
不思議な経験がたくさんできたし、また会いたいと思う人にたくさん出会えたし、本当によかったなと思いました。
名残惜しいけど、みんなとした「see you again」の約束を守ってまだいつか一緒に話せたり、お酒飲めたらいいなあ。
夕方にはバスでフルーツ片手にホーチミンへと向かいます。
最後市場から帰るときに、ジュースを買った売店の横でフルーツを売ってるお兄さんのところでフルーツを買っていきました。
このお兄さんも「これ食べてみなよ」と市場に行った初日にタダでフルーツをくれました。
それが美味しかったので「同じやつ2個ください」と買ったら「お金いいから持ってけ!」と…。
強引にバッグにお金を突っ込んだらこれでもかと袋にいろいろ詰めてくれました。
本当にみんないい人たちばかりだった。
なんか気持ちが穏やかになったというか、もっと人に優しくなろうと思えた5日間でした。
ホーチミンでは孤児院で子どもたちのカットをしてきます。
それは無償で。
その代わりにきっと何か子どもが僕に教えてくれるものがあるのだと思います。
3年ぶりのホーチミン、楽しみだな。