5月もあと数日で終わりですね。
美容室Up to Youを僕とキャンベルで運営するのも残りわずかとなりました。
6月以降は僕達+フリーランス美容師という感じになるので、もう好き勝手やれなくなっちゃいます。
これから先も高円寺で髪を切り続けますが、ひとまず5月いっぱいで区切りということになります。
それに向けて今バタバタとクッソ忙しいのですが、1年間Up to Youという美容室を経営してきた中で貫いてきたことについて、今何となく書き留めておこうと思います。
僕の理想の美容室
世界一周の旅に出るずっと前から「こんなお店がやりたいなぁ」と思っていたものがあります。
いろんな人が髪を切らなくても遊びにこれる場所。
外国人が言葉も国籍も気にせず来れる場所。
お客様美容師間の壁もなく、気楽に滞在してもらえる場所。
そしてビールが飲める美容室。
緊張しない美容室。
それはいわゆる”普通”ではなく、あまりにも自由すぎました。
例えばどこかの会社に所属してそれをやろうとしても、絶対に社長や他のスタッフが許してくれるとは思えないものでした。
やれないのであれば、自分で作ろう…と独立を決心したほど、自分でも”普通”ではないということはわかっていました。
なぜ今のようなお店で美容師をやりたいと思いはじめたのか、そのきっかけは正直ハッキリ覚えてません。
なんとなくだったのかもしれません。
店を始める時にも、例えばモノの配置やサービス内容など一体何が正しいかはわかっておらず、とりあえず始めてみた部分もあります。
ただ実際にやり始めて、少しずつ少しずつ形を変えて、それが間違ってないという事を実感するようになりました。
売れなくていい、支持されなくていい
僕の経営理論の根本にはそんな気持ちがあります。
商売人としてはダメだと思います。
ですが、本当にそう思っています。
例えば僕の美容室ではビールを飲むことができます。
「うわぁ…」って思う人もこの世にたくさんいると思います。
でも、それでいいと思っています。
漫画も読めるし、ゲームもできます。
他のお客さんが例えばカラーリングの放置中で隣の席で待ってたとしても、また同時間帯にいた別のお客さんが望めば全然ゲームでも何でもします。
点が入れば歓声をあげ、負けたら悔しがります。
「他のお客様のご迷惑になりますので…」
そんな事は絶対に言いません。
そんなフザケたことを隣でやられても、迷惑だと感じるお客さんが来ないからです。
僕は基本的には「このスタイルが嫌だと思う人は来なくていい」と思っています。
同じように僕が定めた料金が高いと思う方も来なくていいと思っています。
そんな事言ってると、当然売れない美容室になります。
多くの人には支持されない美容室になります。
でも、それで良いと思っています。
売れるために自分の理想を押し殺して”普通”を演じるよりも、自分らしさを全面にだして好き嫌いハッキリ感じてもらったほうが、結果的に選んでくれた方々の居心地の良さにつながると思っているからです。
99.99%に嫌われる自分でいい
日本の人口は1億3000万人もいるそうです。
その内の1%って130万人ですよね。
めちゃくちゃいます。
0.1%だと13万人
0.01%だとそれでも1万3000人もの人がいます。
もし、もしもです。
東京都の人口の99.99%に死ぬほど嫌われたとしても、0.01%のアツいファンがいてくれたとしたらそれでいいような気がするのです。
変な店、ボロいのに潰れない店、店員が愛想悪いのに人気の店、汚いけど満席な飲食店
それらが生き残れる理由はソコだと思っています。
万人ウケとか普通とか、もし僕がカメレオンのように人によって接し方を変えて生きれるような人間だったらそうしてたかもしれません。
でも協調性がなく、ワガママだから、そんな事ができない。
疲れる。
美容室ってお客様第一っていう方がいますが、個人的には自分第一です。
スタッフがいたとしたら2番目はスタッフです。
3番目に家族がきて、4番目にお客様です。
まず自分が疲れて病んで不幸せじゃいけない。
そしてスタッフが死んだ魚の目をしてちゃいけない。
さらに家族が不幸でもいけない。
人間的、精神的に落ちてると、お客さんを幸せにすることはまず不可能だと思っています。
だから自分が幸せでいられるようなそんな店、そんな自分でありたいな…と常々思っています。
こんな感じだから、同業者からも『なめてんの?』とやっぱりよく思われないこともたくさんあると思います。
それでも不思議と変なお客さんが来てくれる。
お客さんに変とは失礼極まりないですが、いきなりオニギリ食い出す人とか、横浜からきてビール飲んでそのまま高円寺で飲んで終電逃して歩いて横浜まで帰る人とか、本当いるんです。
でもそんな人達が支えてくれてるから自分も幸せでいれてる。
それをどうやったらまた還元できるかな?っていうのをいつも考えてます。
いつまでもワクワク感を提供したい
僕は月に1回くらいのペースで店の内装をイジります。
なんなら価格も2回変えたし、コンセプトも2回くらい変えてます。
必要なものは伸ばして、いらないと思ったものは切り捨てる。
そういうスタンスでやっていたら自然とそうなってしまいました。
先日も『壁にいろんな鏡がくっついてたら面白いのではないか?』とふと思って、リサイクルショップや100均で鏡を7個ほど買ってきて壁にくっつけてみました。
ついでにテレビも木の枠で囲ってさり気なく配置。
こんな事をやってるとよく来てくれるお客さん全員が「あれまた変わったね。前はここにアレがあってなんとかかんとか…」とコメントをくれます。
なんかこういつも新鮮じゃないですけどワクワクする感じを持ってもらえたらすごく嬉しいなーと思っています。
自分の中で「こんな感じでやったらよさそうだな」っていうイメージを実行に移し、カタチに変えてみたところ「いいね」と言われたらやっぱり嬉しいです。
「こんな美容室はじめて」
「楽しかった」
という言葉がやっぱ最高の褒め言葉だし、ビール出したりしてるので帰るときに『ごちそうさまでした』とか言われるのもなんか褒め言葉の様に感じます。
人には人のスタイルというものがあります。
これは完全に僕のスタイル。
1年間(厳密に言うと1年半)やってみて、それは自分の名前だったり、自分の顔だったりする、ある種の変えられない個性のようなものなのかなと思っています。
個性を出すことをあまり良しとしないこの国で、こんなことやってればやっぱり角が立ちます。
まあでもいいんです。
自分の理想の美容室で働けて、僕の事やお店の事が好きな人だけ来てくれて。
愛せば愛されるという言葉がありますが、まったくその通りで、好きでいてくれる人は好きになるし、態度悪い人とかはやっぱ好きにはなれません。
そんな環境でやってると仕事は仕事なんだけどもやっぱり笑える時間が多いんです。
そんな思いでやってる僕のことをアホかと思う経営者さんや美容師さんもいると思います。
理想を貫くことなど無駄だと思う人もいるかもしれません。
でも本当の”売れるか売れないか”は、客数や売上だけでは見えてこないのではないか?と思っています。
自分の売りたいものがない人、自分の売りたいものを買ってくれる人が誰なのかわからない人、自分の売りたいものを買いたくない人に売ってる人、自分の売りたくないものを売ってる人…。
買いたくない人には売らないほうがいい。
買いたい人に売ったほうが、お互い気持ちがいいので、結果的に幸せ度みたいなものや感謝の気持ちは生まれやすいのだと思います。
ぶっちゃけますが、Up to Youがオープンして1年以上経ちますが、高円寺在住の方は7人?8人?しか来てくれませんでした。
隣の高円寺、阿佐ヶ谷、中野で考えてもたぶん20人とかそんなもんです。
もはやウケますよね。
それでも0.01%の人たちのお陰でここまでやってこれました。
本当に本当に本当に本当に感謝です。
なんとなく、本当なんとなく思いを綴ってみました。
なんか閉店ガラガラ風ですが、そんな事はないです。
6月以降お店を人に貸すだけで、僕とキャンベルは端っこの方で今までどおりやっていこうと思います。
7月から旅するとか言ってるけど、毎月高円寺でお世話になってる皆さんの髪をやらせてもらいに帰ってきます。
カルピスが飲める美容室にしたけど、引き続きビールもまだ飲めますし、ゲームもできます。
もしかしたら夏くらいからヤクルトが飲める美容室にするかもしれませんが、笑って許してやってください。
これからもよろしくお願いします。