この国の未来はどうなるのか…
興味深いツイートを見かけました。
原宿の美容室Lilyの代表柳本さんがつぶやいていた世界と日本のカット価格の話。
今月のBoBでカット料金の話があるんだけど、
カット料金の世界平均額が『3867円』
カット料金の日本平均額が『3462円』
日本のカット料金はもはや世界平均より低いんですね。
世界は所得が上がると同時に物価も上がってる。
ちなみに世界で1番カット料金が高い都市はオスロだそうです(1万739円) pic.twitter.com/KKwlyzXRKI— Lily代表 柳本 剛 (@BiyokaYanagi) February 4, 2018
カット料金の世界平均額が『3867円』なのに対して日本平均額が『3462円』なんだとか。
世界の約70の主要都市との比較だそうです。
世界平均より安いということですがこれ2016年のデータだそうで、たぶん今はもっと日本の平均はさがってると思います。
縮小を続ける市場規模
市場規模とはわかりやすく言うと全美容室の売上です。
【美容市場規模】
2011年 1兆5650億円
2012年 1兆5575億円
2013年 1兆5487億円
2014年 1兆5285億円
2015年 1兆5220億円
2016年 1兆5167億円
【ヘアカットの市場規模】
2011年 3億円
2012年 2億9850万円
2013年 2億9370円
2014年 2億9300円
2015年 2億9250円
2016年 2億9150円
毎年減少を続けています。
2017年も前年比99.6%だったらしいので下がっているわけですね。
それに対して毎年3000件くらいずつ美容室が増えてるというのでこれは本当にとんでもない状況です。
「美容室多すぎだよね〜」
とか言ってる場合じゃないレベルです。
店も美容師も増え続けてるのにここ5〜6年で売上500億円消えたって事なんです。
どこいったの?コインチェックもビックリです。
主に要因は3つ。
人口が減少したこと、来店サイクルが長期化したこと、クーポンなどでや値引きをしたことです。
【人口減少】と【来店サイクル】については日本の社会的な要因が大きいので美容師がどうにかすることはできないと思います。
しかし値引きは美容師や美容室が自身の判断でやっていることです。
売上下がる→値引きして集客→長時間労働
数年前からこの流れに間違いなくなっています。
広告費なども含めた経費を上回る売り上げを出さなければならないので、安いぶん時間はかなり使うと思います。
今それでもよくても、今度状況は更に悪くなります。
人口が減るとサロンへ来る人が減ります。
高齢者が増え、介護される人もする人も増えたら貧困世帯が増えます。
さらに消費税や物価が上がったりすれば来店周期はもっと長くなるし、もっともっと安いサロンを求めて人は流れていくことになるはずです。
技術云々ではない理由で失客が増えていきます。
それで、いざそうなったらもっと安くしますか?という話です。
売上下がる→さらに値引きして集客→さらに長時間労働
この流れになってしまうと、ヤバすぎるのが実働時間です。
まず休めません。
それもお客さんが来ればの話です。
マジでヤバすぎるのです。
デフレスパイラル。
1年半前に値引きはやめるべきと書いて賛否両論いろいろ言われたんですけど、僕的にはこのヤバすぎる現状と未来を考えたら否定する意味がよくわかりません。
今やらなきゃいけないのは値下げして売上維持することじゃなくて、他の方法を考えることじゃないか?と思うんです。
市場規模が下がり続けてるのに競合が増えまくってるカオスな状況に対して真っ向勝負するのってキツイんじゃないかなと思います。
だから、売り方を考えるか、売り物を考えるかしないといけなくて、気付いてやってる人はもう何年も前からやっています。
売り方を変えていく…これに正解はないですが【価格】ではなく【価値】を売る方向にシフトしていくべきだと思います。
そのためには「値段関係なく選んでもらう確固たる理由」が必要で、それがあるかないか、それを提示できてるかどうか、がカギなのだと思います。
選んでもらう理由がない人は、まず時間が必要です。
選んでもらう理由を作るための時間が。
そうなればまず確保すべきは”時間”だと思います。
時間がないと武器も作れないということです。
売り物を変えていく…
これは【美容師は髪を切る仕事】だという概念をぶっ壊す必要があります。
セミナーや美容師コミュニティでもメンバーに話したりしますが、美容師が売れるものは5つあります。
ヘアカットやヘアカラーというものはそのうちのたった1つでしかないんです。
単純な話、あと4つのうちの何かを売って【減った売上】をカバーしてしまえばいいと。
その4つが何かはセミナーやコンサルやコミュニティで話してるので、もし機会があれば聞いてみてください。
コミュニティではサロンでの実働に加えてそれらを売ることを推奨してて、ちゃんと美容師として30万売り上げプラスに出来たって人もいたので、これはすでに結果が出ています。
価値にお金を払わない日本
正直ウンザリしてる部分もあるのですが、日本では圧倒的に価値より価格で選ばれやすいです。
僕は世界各地で「あなたはプロフェッショナルだ」と言われ「プロは信じる」「プロには価値がある」という言葉を頂いてきました。
“路上でカットしてるのに”です。
世界の主要都市の美容室の価格がなぜ日本より高いか?
1つは【日本が下げてる】ですが、もう1つは【海外ではちゃんと人が評価される】からです。
良いサービスを提供したり、プロフェッショナルはちゃんと評価されるのに対して、低いサービスにはそれなりの評価しかしません。
サービス提供側(例えば美容師)がすごい良いサービスを提供するなら必然的に価格も高く設定します。
安い値段設定であればそこそこのサービスしかしません。
わかりやすいんです。
例えばホテルがわかりやすいと思います。
高級なホテルはきれいで、安いホテルは汚いし狭いと。
消費者はその価値(サービス内容)を”選んで”いるわけです。
もちろん価格で選ぶ人もいますが、判断基準はそれだけじゃないということ。
日本はどうか?
日本は安くて良いものが好まれます。
安かろう悪かろうなんてクレームですクレーム。
やっっすいご飯屋さんで提供が遅れただけでブチ切れたり、電車が5分遅れてブチ切れたり(笑)
だから日本でサービス提供する際はとにかく質にはこだわる必要があります。
それで価格を安くしてると、とくに現場の人間が1番つらいです。
仕事量に対して報酬(評価)が低いので、必然的に長時間労働になっていきます。
それにかなり気も使って接客もすると。
日本てサービス業が経済の75%をしめるらしいんですが、それだけの人が関わっているのでこれは本当に大変なことです。
仕事量を減らすためにサービス提供側がとれる措置としては2つ。
サービスの質を落とすか、値段はそのままで(もしくは上げて)ちゃんと評価してもらうものを作るか。
ですが【安くて良いものが選ばれる】ので、質をさげたら結局利用されなくなってしまいます。
なのでもはや選択肢はなく、時間やお金を投資しても評価してもらえる圧倒的な武器を作るしかないです。
それは別に美容に関係があってもなくても評価してもらえればなんでも良くて。
例えば僕自身は旅した経験とブログですが、本当になんでも良いと思います。
それができている人や企業は価格が安くはないのではないでしょうか。
あとは市場に真っ向勝負するのを避けて、美容師として売れるサービス以外のものを売ることでバランスを取るか。
それしかないと思います。
ただ1つ確かなことは、安いものを求める流れはこれからどんどん加速していきます。
サラリーマンの年収も下がると言われ、2025年には団塊の世代が後期高齢者の仲間入りをすることで、医療や介護の負担も上がります。
高齢者の貧困世帯は500万世帯にもなるとのことで、仕方ない事なのかもしれませんが、働く側としては仕方ないで終わらせられることではないです。
なぜならそれぞれに生活があるからです。
計画なしの出店が危ないと言われるのはそういった流れがもう始まっているからです。
美容師に限らず、すべてのサービス業で同じことが言えます。
何事も動き出してすぐには結果は出ないので、少しずつでも今行動を起こす必要があると感じています。
とにかくそのためには時間が必要で、時間が無いということは致命的です。
サービス業に携わる人が苦しむようなサービスとは一体なんなのでしょうか。
買う側も売る側も、考える時なのかなと思います。
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