美容師の教育について思うこと。
今日も美容師さんのお客さんがいらっしゃいました。
転職相談で。
いろんな事情があれど、大体の悩みの原因は「時間がないこと」「お金がないこと」この2つです。
今の職場でそれを解消できればやめなくて済むと思うのですが、それが難しいから悩んで僕みたいなやつのところにくるのだろうな…と思います。
その問題の解消の鍵を握るのが“教育のシステムを変えること”だと僕は思っています。
今日はそんなお話を。
毎度のことながらJun kuwabara的考察なので、イラッとしたら戻るボタンを。
学びたいものを学びたい人から学ぶという新常識を作る
僕が運営するシェアサロンとフリーランス美容師コミュニティのサロカリではメンバー間で勉強会なるものをやっています。
その取り組み自体まだまだ始まったばかりでそれほど活発ではありませんがそれでもすでに5回ほど勉強会が開催され、今後の予定もあります。
こんな感じで。
- 業務委託サロンのリアルを知る会
- ヘアアレンジ講座
- オンラインサロンのメリットと活用方法
- メンズカット講座
- 着付け講座
- ヘアセット講座
- ワードプレスのブログ講座
講師は誰でもOKで、得意なものがある人ならどんな内容でも構いません。
グループ内でリクエストも受け付けていて、それから始まる勉強会もあります。
そして実際に10万円の縮毛矯正で有名な銀座ROYSのオーナー佐伯さんが名乗りを上げてくれて…
すごいガチですね。
写真はつい先日行われたカット講習の様子です。
僕は仕事で行けなかったのですが、キャンベルが行ってきました。
以下はその感想文です。(キャンベル著)
〜佐伯さんカット講習感想文〜
ひょんなことから応えて下さった佐伯さんのもとカット講習を受けてきました。
周りのサロカリメンバーはみんなスタイリストで、正直ドキドキしましたが、カット講習のわくわくのほうが数倍勝っての講習でした。
今までいろんな講習に行ってきたけど、自分がして欲しいとリクエストして行く講習は初めて。
ましてや今までのカット講習はレベル分けされていたので、余計に緊張しました。
講習内容はメンズカット。
初めに佐伯さんがデモをしてみんな持ってきたウィッグで練習するという内容でした。
私は宝物のレッスンノートとたくさんの質問事項と共に参戦。質問したいことを書き溜めていました。
佐伯さんもいつも通りジョークを八割交えながらの講習。みんな終始笑ってました。
同じお店のスタッフじゃないのに、雑談しながらのゆるい感じ。でもみんな何か吸収しようと必死。そして、お互いの技術チラチラめっちゃ見てました!!
その中でも、私が刈り上げの事とか佐伯さんに聞いてたら、他の方が「ハサミ貸そうか?」と普通の講習ではまずありえない会話。
今まで8年美容師をしてきてたくさん講習に行ったけど、どの講習よりも講師の他、参加者からも何か吸収したいと思える講習でした。
質問攻めする私に終始、「こうしたら楽勝!!」「ビビらない!!」と佐伯さん。
その反面いろんな苦労話もカットしながらしてくださり、やっぱり今が素敵な人には必ず苦しかった時代があると再認識。
カット以外のこともすごく勉強になりました。
自分が何か勉強したいと思ったら、お店の垣根を超えて、自分が学びたい技術を信頼できる人にお金を払って教わる。
それが個人間で出来ることが普通になればいいのになと思いました。
とりあえずジョーク多すぎてツッコむのが大変だった。
感想文読んでもらったら、どんな感じだったかわかると思いますし、良いか悪いかの判断もしやすいのかなと思います。
つまり、美容師仲間とこんなことをやっております。
そして、どんな内容でも毎回有料にしてもらっています。
それには2つの意図があります。
1つめの意図は「学びたいものを学びたい人から学ぶという新常識を作る」というものです。
昔から美容師が技術や知識を学ぶ方法は2パターンあります。
現在もそれは変わりません。
【パターン1】休日に行われるセミナーに有料(無料のもある)で参加するというもの。
【パターン2】就職したサロンで無料で先輩やオーナーに教えてもらうというもの。
基本的にはこれだけです。
パターン1のセミナーは、スケジュールや場所が合わなければいけないし、学びたいものが都合よく開催されてるとも限りません。
なので学ぶ側からしたらすごくやりづらいシステムです。
そしてパターン2。
これが美容師業界でこれから変えるべきところなのではないか?と僕は思います。
まず「職場で無料で後輩に技術を教える」というのは当たり前すぎて誰も疑問には思わないと思うのですが、よくよく考えたら普通に不思議です。
教わる側はまだしも、教える側が労働時間外にやっているからです。
教わる側はただで学べてラッキーなのですが、教える側が無償で時間外労働をしている感覚になってしまうので、だんだん辛くなってきます。
「先輩もそうやってお前に教えてきただろ!?」と言われたら全くその通りなのですが、実際その教育に費やす時間が多くて自分の時間がとれないことも原因の一つと考えて辞めていく人が多いようです。
中には「まじで?」と思う人もいるかもしれないですが、そういう方がたくさん相談に来るので、マジなのです。
後輩に教えたくない…ということでは決してなく、教える事で自分の時間がなくなることが嫌ということです。
ということは、労働時間内(給料が支払われてる時間内)に教えたらいいじゃんって話になると思うのですが、現在の働き方ではそれどころじゃないので無理なのだと思います。
美容師にとっては当たり前すぎるそういった常識も、他の業界を見れば見るほどなんか違う…という気になってきます。
どんな仕事も基本的には労働時間内で部下を教育していきますよね。
なぜそれが美容師に限ってはできないのか?
その理由は簡単。
“誰もそのことには触れないから“です。
ただそれだけです。
基本的には無償で教育して良いことなんかあんまり無いと思ってます。
もし労働時間外に教育をするのであれば、スタイリストが自分の体験してきたこと、知識、技術を提供するということだけでなく、大切な時間さえも使うのを考えるとそこは有料にすべきなのかもしれません。
教育も労働の一環と考えるべきで、今までどおり無償でするのであれば労働時間内におさめる必要があります。
それが「無理でしょ」というのであれば、まずは無理なくできる方法を考えてみることも大切なのかもしれません。
結局そこをどうにかしないと、辞めてく人は減らず、みんなが辛い思いをするのだと思います。
また、フリーランス化も加速しているので、今後確実に教育が見直されます。
フリーランスにも学びの場は必要だからです。
現代では会社に所属せずともサロカリのように美容師コミュニティに入ったり、SNSを活用することでいろんな美容師に出会うチャンスを得ることができます。
なので遅かれ早かれ【学びたいものだけ、学びたい人から学ぶ】という新常識は確立していくのだと僕は思います。
すごく自分勝手だと思われるでしょうが、どこの世界も実はそうして教育というものが成り立っていますし、その方が効率もいいし、学習意欲もわきます。
実際に勉強会に参加した人たちの反応を見てるかぎり、間違っていないと思います。
今大切なのは”変えないこと”ではなくて、“その環境を提供する誰かの出現”です。
教育がサロンワークに取って代わる時代が来る
ずーーーーーーっと前から思ってました。
もし教育を他の業種のように有料にしたら、美容師って一生続けられるようになるな…って。
例えば塾なんかがそうです。
学校で勉強してるのに、レベル高いところを目指してる子供は当たり前に塾に通いますよね。
それを教えてる塾講師という人たちがいますが、それは立派な仕事です。
それで生活だってできます。
仕事なので当たり前にお給料や報酬をもらいます。
何が言いたいかというと、同じことを美容師もすべきではないか?ということです。
一部の有名美容師しかセミナーをすることが許されなかった時代はもうとうの昔に終わりました。
今はネットやSNSを使ってどんな人でも講師になることが可能です。
僕なんかがいい例です。
「ブログとSNSのセミナーやります」といえば、僕から学びたいと思って来てくれる方がいるのです。
自分の特技、得意分野、知識、ノウハウというものをわからない人やできない人に売る事は立派な仕事です。
例えばサロンワークという激務だけで生活していこうと考えたら、体力的に無理になるタイミングはどこかで来ると思います。
ですが、例えば5割サロンワーク、5割教育という仕事のスタイルに変えた場合、体力的にも精神的にも続けていくことは可能になると思います。
もっと言えば、足腰を悪くしたり、事故で手がなくなったとしても、教育という仕事をしてきた人であればサロンワーク0、教育10割という美容師のあり方さえ実現させることが可能です。
キャリアが長い人ほど、たくさんの知識と技術があるはずなので、むしろ教育という分野に移行していくことは方向性としては正しいと思いますし、そういった意味で”若手に還元”したり”業界に還元”するというのはすごく良いことではないかと思います。
フリーランス化も進んでいる今、需要はどんどん増えていくと思います。
何も全てを教える必要はなく、自分の「これだけは負けない」と思える特技を教えるだけなので難しいことはないはずです。
それでいて「学びたい」と思ってくれた人には感謝されますし、有料で教育する立場になったときに自分自身も「学ぼう」と思うはずですし、双方にとってもいい事だらけです。
専門学校卒業後すぐにスペシャリストになれる
これから美容室は専門化していくので、トータルビューティーサロンよりも専門サロンが増えていきます。
スパ専門店、カラー専門店、カット専門店……
人によっては【美容師=スパニスト】かも知れないし【美容師=カラーリスト】かも知れないということです。
どんな美容師になりたいか?は美容師の卵たちが選択することで、僕達大人が自分たちの歴史を押し付けて決めることではありません。
そういった人たちは、学びたいものを学べる環境でその技術と知識を集中して学ぶべきです。
仮にヘッドスパ専門店のオーナーが、ヘッドスパの養成塾もやっていたとします。
例えば10:00〜17:00はサロン、18:00〜20:00は塾みたいな感じで。
専門学校に通う2年間で、そこに通いまくれば卒業して免許取得と同時にスパニストとして即戦力としてどこでも働くことが十分可能です。
その後カットを学びたかったら同じ要領でカットを、カラーを学びたかったら同じ要領でカラーを学べばいろんな技術を身につけることもできます。
なぜか日本の美容師業界ではすべての技術を平均的に伸ばしていくことがいいとされています。
トータルでできる事もメリットはありますが、個人的にはそれよりも1つ負けない武器を持つほうがよっぽど強いし、この大変な時代でも勝ち残れると思っています。
ファミレスで働くにはいろんな知識が必要かもしれないですが、ラーメン屋で働くならパフェの知識はいりません。
もしも必要になったらその時にパフェのスペシャリストに教えてもらえばいいわけです。
今までは平均的な人がもとめられてたかもしれませんが、これからは何かが特化してる人のほうが求められます。
そうなれるかどうかはまさしく自分次第なので、早め早めに動き出すほうがいいのかな…と僕は思います。
だからまずはそういう環境を作る人がたくさん出てきたらいいな…と。
僕も今年頭から動き出しています。
サロカリで教育中のニート松下、それから3年でドロップアウトしたアシスタントの萌カス。
二人についてはこちらの記事で→【ガチンコ美容師クラブ。】、【美容師の弟子とりました。】
二人を見ています。
自分自身の経験にもなればと思い、今はまだ無償でやっています。
教育の練習って感じですかね。
この経験をもとに、また新しいことを始めていければいいなと思ってます。
(もえカスは自称なのであしからず)
萌カスは順調にモデルトレーニングをこなし、あと一ヶ月後には予定通りスタイリストになります。
※二人共モデルたくさん募集してるので是非ご協力お願い致します。
そんな二人にイチバン教えたいことは、まさに【特化した何かを作れ】ということと【バランスは取るな】だったりします。
多くの人は「バランス」をとろうとします。
アレもうまくなりたい、これもうまくなりたい、あの世代もこの世代も全ての人を担当したい…
仕事も趣味も家庭もお金も時間も全部うまくやりたい……
そんなバランスのとれた仕事内容と生活を送ることなんてまず無理だと僕は思うのです。
「美容師とはこうでなければならない」なんていう思い込みが強ければ強いほど、バランスをとりたくなります。
仕事よりもバランスを取ることに必死になってしまうと、結果的に体を壊したり仕事をやめる羽目になります。
せっかくなった美容師をやめてしまうハメになるくらいなら、最初からバランスなんか取らなくていいと僕は思います。
その代わり、本当にやりたいことをやる。
極める。
本当に打ち込める物を強化して、その分野で強くなれれば結果的に望んだ理想みたいなものも手に入るのかもしれません。
そんな事を伝えられたらいいなと思っています。
そして、いずれサロカリ出身の方の個人塾とかも出てきたらいいなーなんて思ってます。
カット得意な人はカットを教える塾を。
カラー得意な人はカラーを教える塾を。
学生や辞めたアシスタントやフリーランス向けに…。
そんな未来のほうが、みんな幸せになるんじゃないかな…なんてずっと前から思ってます。
とりあえず、美容師コミュニティの一員をやれててすごく可能性が広がるなーと最近ヒシヒシと感じています。
まだまだ突き進んで行ける気がします。
ある意味最先端を。