フリーランス美容師と独占禁止法。グレーゾーンな働き方は今後どうなるか?

去年も一瞬あった話なんですが、どうやらフリーランスが法律で守られるようになるみたいです。

いつか来るなーと思ってましたが、ついに来たって感じです。

小難しい話なのですが、フリーランスや美容師の方はぜひ下まで読んでみてください。

フリーランスが独占禁止法で守られるように

まずニュースになってたやつ。

 働き方の多様化に合わせて、特定の企業に属さない「フリーランス」の人たちの保護と活用を考える時期に来ている。

公正取引委員会の有識者会議が、フリーランスを独占禁止法で保護すべきだ、とする報告書をまとめた。著しく不利な条件で仕事を押しつけられるなど、問題がある事例を挙げて、企業に是正を促している。

複数の企業が協議して、報酬などの条件を同じにする。互いの人材を引き抜かないようにする。こうした行為は、競争を阻害するとして、独禁法違反の可能性があるとの見解を示した。公正な競争の下で、フリーランスの人たちが能力を発揮できる環境を整備することが大切だ。
http://sp.yomiuri.co.jp/editorial/20180217-OYT1T50002.htmlより

と書いてありますが、つまり超簡単に言うと、企業から仕事を請け負うフリーランスたちが「不利な条件で働かないように守ったほうがいいよね」ということ。

契約書がなかったり、仕事内容が一方的に変更されたり、企業に都合のいいように使われることがあるのですが、今のところフリーランスを守る法律というのがありません。

労働基準法ってやつじゃないの?と思う人もいると思いますが、労働基準法は雇用されている労働者を守るための法律なので個人事業主のフリーランスは当てはまらないんです。

そんなフリーランスを独占禁止法で守る方向になるようです。

フリーランスは2016年に1000万人を超えて、2017年には1100万人を超えたそうですが、美容業界でも8万人を超えたとか。

美容業界でフリーランスといえば面貸し(個人店経営者)と業務委託で働く美容師で2分されると思いますが、今回の話は業務委託のほうが該当します。

面貸しだと企業から仕事をもらってるわけではないですからね。

これからもっとそういう人が増えていく事を考えると、遅かれ早かれこういう話は出るわけで、今まで曖昧にされてたグレーゾーンが白黒わかれる時が来てるということでしょう。

独占禁止法とは?

そもそも独占禁止法って何?みたいなところもあるかもしれないので簡単に説明すると、独占禁止法とは“市場経済のルールを定めた法”のことです。

公正で自由な競争を邪魔することを禁止して、消費者の利益の確保と経済の発展が目的です。

例えば、1つの商品があるとします。

A、B、Cそれぞれの企業が商品を売るために競争をしたりすることが”公正で自由な競争”というやつです。

でも同じ商品に対してA、B、Cの企業が裏で繋がって価格を一律に設定すると当然競争は起こりませんし、みんなで商品を値上げしたら消費者はしぶしぶ買うしかないわけです。

そうなると消費者が不利になるなので、そういうのを禁止する法律ということです。

裏で手を組むのを「カルテルを結ぶ」と言います。

鋭い方は「あれ?」と思ったかもしれないのですが、組合というものは独占禁止法に引っかかる可能性があるそうです。

今はわかんないですけど、かつては理容組合とか美容組合は地域で価格を統一させたり営業時間を統一させたりということがあったようですが、これってつまり「カルテルを結んでいる」状態です。

“競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するもの”

と判断されたらアウトということ。

公正取引委員会のHPに「理容組合のガイドライン」という項目があり、ハッキリそう書いてありました。

ちょっと話がそれましたが、それが「独占禁止法」という法律です。

実は下請法というものもある

「下請法」とはフリーランスや中小規模の下請け業者を守る法律です。

親事業者と下請け事業者のあいだで公平な取引が行われるようにしたり、金銭面などのトラブル防止のためだそうです。

http://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html

下請け法ではフリーランスに対して支払い遅延したり、下請け代金の減額をしたりするのを禁止したり…

あとは契約書をちゃんと作る義務があったり。

詳しくは公正取引委員会のHPを見てもらえたらと思うんですが、そういうことが決められています。

美容師の業務委託で話を勧めると、親事業者とはサロンを直接運営する企業のこと。

下請事業者とは親事業者から仕事を請ける側の事業者のこと。

つまり委託されるフリーランスのことで、フリーランスが業務委託の企業からめちゃくちゃな条件で働かされたりするのから守るための法律ということです。

ただしその下請け法にフリーランス美容師が該当するかは謎です。

下請け法で守られる範囲は決まっていて

  • 情報成果物作成委託
  • 製造委託
  • 修理委託
  • サービス提供委託

という4つの分類にわかれるようです。

美容師は「サービス提供委託」だと思うんですが、サービス提供委託の項目を見ると…

“ビルなどのメンテナンスや運送などの各種サービスを提供する事業者が、請け負っている役務提供を他の事業者に委託することを「サービス提供委託」「役務提供委託」という。建設業を営む事業者の建設工事委託は、サービス提供委託には含まれない。”

いまいちよくわからなくてあれこれ有料の弁護士サイトで調べてみたんですが、美容師が業務委託でめちゃくちゃな条件で働く場合は下請け法に引っかかる可能性はないこともないそうです。

判断基準が「合理的かどうか」「事業の実態による」だそうで判断は公正取引委員会に委ねられるとのことでした。

うーんこういう曖昧なのが法律のよくわからないところ。

ただ1つ確実にフリーランス美容師が下請法の対象外になるケースが親事業者の資本金が1000万円以下の場合。

下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模と取引の内容で判断されるようです。

親事業者の資本金が1000万以上の場合に限り、その企業から不利な条件を突きつけられたら下請け法に守られるということ。

なので業務委託サロンを運営する企業が資本金500万とかだったら、どんなに無茶苦茶な条件で委託されてても、法的には問題にならないということです。

つまりフリーランスは守られない、と。

なので独占禁止法で守るように変わるのだと思います。

美容師フリーランスはどうなるのか?

業務委託とは正社員、パート、アルバイトでお店が美容師を雇わず、1対1の事業主として取引をしている状態です。

たまに業務委託サロンに就職するみたいなこと言う人がいますが、それは間違えです。

【フリーランス=業務委託サロンで働く人】

ってわけではなく

【フリーランス=個人事業主】

なのです。

雇用されている場合は【社会保障】【給料の保障】などがある代わりに【○時〜○時勤務、週○日勤務】などと決められるんですが、事業者同士の取引の場合はそれはできません。

拘束時間が決まってたり、勤務日や時間をサロン側が強制することができません。

委託の場合は仕事の成果に対しての報酬なので、時給を決めることもできません。

保障もないのに時間や報酬を拘束されるってのはまさに不利な条件というやつです。

でも美容師のサロンワークってある程度決まった時間に人がいないと成り立たないので、拘束されることはあり、結構この手の話はいまだに聞きます。

実はこの前会った後輩は「月25日出勤の1日8時間労働者が義務付けられてる」と言っていましたし、お客さんで来てくれた美容師は売上の50%の報酬からさらに家賃と材料費が引かれてほとんど手元に残らないと言っていました。

3月からUp to Youで新しくフリーランスとして加入する方は1年くらい業務委託サロンをやめさせてもらえなかったそうです。(しかも時給1000円)

グレーとかじゃなくて普通にアウトなんですが、現状そうやって企業にとって都合がいい環境で働いてる人が多いわけです。

なんで辞めないの?と普通に思うんですが、美容師は真面目な人が多いのと元々長時間労働とかに慣れてるので「そういうもんだ」と思って働くようです。

確かに一時的に収入が増えても、大切な限りある時間はどんどん消滅していくわけで…

どうせ拘束されて働くなら保障もある会社でちゃんと雇ってもらったほうがいいと思います。

なのでそういう環境で働くフリーランスにとっては、今後法的なガイドラインができることはとても朗報と言えると思いますし、働き方がまた変わると思います。

まとめ

  • 独占禁止法で守られるようになる
  • 親事業者が1000万円以上の資本金があれば下請法で守られるかも
  • 業務委託は現状グレーゾーン

法律が変わって規制が厳しくなれば、これまで通り運営できなくなるサロンも出て来ると思います。

ただし、告発があれば…。

どんな状況であろうともフリーランスが「不利だ」と思わなければ結局何も変わらないのです。

法律も大切ですが、そもそもフリーランスは独立した事業者なので、フリーランス自身が働き方について知識をつけることがなにより大切だと思います。

「委託は稼げるから」「お祝い金もらえるから」みたいなのは甘い言葉であって、目先のお金に釣られずちゃんと契約内容を確認したり、本来は対等な取引相手なので、フリーランス自身がおかしいと思うことはサロンに対してキチンと言うべきだし、不利な条件で無理して働くことなんかないです。

自分が事業主でいるということは、どういうことなのか?

事業主であれば技術だけでなく、最低限の知識は絶対必要です。

税金とかもそうですが…。

業務委託が悪いとかじゃなくて、そういう働き方を選択をするのであれば、ちゃんと知識をつけて自分の身は自分で守るべきだと思います。

小難しいことをつらつら書きましたが、本当大切なことだと思うので、これを読んだフリーランスの人がなんか少しでもプラスにしてくれればいいなと思います。

終わり。

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